職場復帰支援Q&A:生活記録表や生活リズム以外の復職可否の判断基準は

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質問:生活記録表や生活リズム以外の復職可否の判断基準は

何度も休復職を繰り返しているような社員の場合、生活記録表で生活リズムを確認するだけでは、再発の可能性が高いように感じています。生活リズム以外に、復職の可否の参考にするべきポイントや基準があれば教えてください。

回答:再発の要因になりそうなことを洗い出すことは重要だが、復職の判断基準とするかどうかは要注意

本人や関係者と相談して、再発の要因となりそうなことを洗い出すことは重要ですが、それを復職可否の判断基準だとして、むやみに復職を先延ばしにすることは不適切です。そこで、復職にあたっては、当面は問題が起きにくいような環境を調整します。さらに復職後も、継続的な面談を通じて本人に対するサポートや職場に対するサポートを継続していきます。そうしたことが結果的に再発予防につながります。

多くのメンタルヘルス不調の事例では、休業中の生活リズムが安定すれば復職可能と考えることができます。つまり「朝、出社に間に合うように起床できる」、「日中は朝9時から午後3時まで図書館などで外出してすごせる」「こうした生活を、月曜日から金曜日まで、少なくとも2週間は続けられる」かどうかを生活記録表で確認します。この基準を満たしていれば、体力や生活リズムは復職に耐えられる程度に回復していると判断できます。

しかし、これ以外にも「再発の要因となりそうなこと」、「過去に再発の原因となったこと」を洗い出しておくことも重要です。休復職を何度も繰り返しているような事例では、「生活リズムが十分に回復していても」、復職後に再燃や再発を繰り返すことがあるからです。本人だけでなく、上司などからも話を聞くと、より具体的な状況が見えてきます。そして、体調を崩すきっかけや原因がみつかったら、「それを防ぐために、休職中に何か準備や対策ができるだろうか」、「対策が十分かどうか、どのようにして評価を行えばよいか」を考えるようにします。

ただし、再発の要因がみつかったとしても、「その要因を取り除けない限りは復職させない」とすることには問題もあります。本人がその問題を認識するまでに時間を要することが多いからです。また、本人がその課題を認識したとしても、すぐに改善策を整えたり、十分に対応できるようになるにはさらに時間がかかる上、休業中に取り組めることには限りがあります。つまり、「本人が課題を認識して、休職中に十分な対策を行えるまで、復職は認めない」としてしまうと、いつまでたっても復職できなくなってしまうのです。

さらに法的にも、休職の原因となった疾患が改善したら、職場復帰させる必要があります。例えば「うつ病」で休業している社員がいたとします。この場合、本人のストレス耐性が低くても、職場の人間関係のトラブルが続いていても、仕事のパフォーマンスが低くても、本人の素行に問題があったとしても、それらを理由にしてむやみに休職を引き伸ばすことはできないのです。また、「職種や業務内容を限定していない労働者の場合、使用者は、従前業務へ就労が無理でも、実際に行える業務があるかどうか、実際に配置できる職場があるかどうかを考慮する必要がある」とされています。

復職支援において産業保健スタッフが行うべきことは、そうした「復職に関する課題」を発見し、職場と連携して「可能な範囲での環境調整」を行いつつ、本人自身がその課題を認識できるようサポートすることです。実際の場面では、しばらくの間は「問題が起きにくいような調整や配慮」を行い、予防線をはった上で復職させるます。また、復職後も、本人との面接を継続して、問題が生じていないかをモニタリングしつつ、本人が課題を認識できるよう、カウンセリング的な対応を続けます。そして、本人に課題感が生じてきたら、「その課題について、一緒に考えていきましょう」、「まず、主治医の先生に相談してみたらどうでしょう。きっと役に立つアドバイスがもらえると思います」などと伝え、サポート資源につなげていくようにします。

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