産業医向け:健康診断結果の自動判定・自動色付け用Excelシート

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産業医の重要な仕事のひとつに「健康診断結果の確認」があります。社員の健康診断結果を見て、再検査・精密検査・病院受診について指示を行ったり、異常所見についての説明やアドバイスを行ったり、必要に応じて、勤務時間や業務内容を調整するために職場と連携したりします。

健診結果が数十件程度であれば大した手間ではありません。しかし、件数が増えてくるとなかなか大変な作業になります。数百枚の健康診断結果を見ているうちに、疲れてきて判定が甘くなったり厳しくなったりと、判断にばらつきが出ることもあります。一番困るのは「見逃し」や「見落とし」があることです。

机の上に積み上がった、数百枚を超える健康診断結果用紙の束を見て、次のようなことを思ったことはないでしょうか。

  • 「慎重にチェックする必要がある検査だけ、目立つように色がついていればなあ」
  • 「慎重にチェックする必要のある項目名が、一覧になっていればいいのになあ」
  • 「血圧の数字が140を超えている場合には黄色に、160を超えたらオレンジ色に、180を超えたら赤色にしてほしいなあ」
  • 「所見がD以上の場合だけ、胸部レントゲンの結果を目立たせてほしいなあ」
  • 「自分用に基準を自由に設定できたらなあ」
  • 「判定の基準や色づけの設定を、ちょちょいと簡単に変更できたらなあ」

中には、こうした処理を行おうとExcelを使って、関数や条件付き書式を駆使して、健康診断結果の加工に挑戦した方もいると思います。

しかし、計算式や条件付き書式などを使えば使うほど、Excelシートの中身が複雑になってきます。基準値や色分けの条件を少しだけ変更したいとか、対象となるデータや検査項目を追加したいとか、別の健康診断データを対象に処理を行いたいときに、セルに設定してある計算式や書式の設定が崩れてしまい、うまく動かなくなる恐れもあります。

健康診断結果の自動判定・自動色付け用Excelシート

そこで、誰でも簡単に、あらかじめ設定しておいた基準値に沿って、健康診断結果に色をつけたり、どの項目に該当したのかをラベルに表示したりできるExcelシートを作成しました。設定の変更も簡単ですし、一度設定しておくと、何度でも繰り返し使うことができます。

使い方はとても簡単です。判定したい健診データを貼り付けて「白血球数 ≧ 11000」などの基準を入力するだけです。基準に該当する検査項目に色を付けるだけでなく、「就業制限:HbA1c」「要確認:血圧, WBC, HbA1c、ALT」「有所見:視力、体重、血圧、肝機能」など、項目名を表示することもできます。

健康診断の判定結果の例

このシートを使えば、大量の健康診断結果を確認する際の「前処理」を素早く行うことができ、最終的な目視でのチェックを素早く・効率的に・見落としなく実施できます。

以下、簡単に使い方を説明します。実際のファイルをダウンロードして、実際にさわりながら読んでいただくとわかりやすいと思います。作業の効率化にお役立てください。また、ダウンロードしたファイルに含まれている健康診断結果は架空のサンプルデータです。 判定条件もサンプル用に簡略化してあります。

また、本来想定している使い方とは異なりますが、健診機関や医療機関から納品されたCSVファイルやExcelファイルのデータチェックなどにもお使いいただけます。例えば、あり得ない桁数の数値が入っているセルや、データが欠損している(空欄になっている)セルがないかどうかのチェックなどにも利用できます。

(1) 健康診断結果の貼り付け

CSVデータ・Excelデータになっている健康診断結果を貼り付けます。項目の表記や並び順などファイル形式は自由です。ただし、1行目の検査項目の名称は重複しないようにしてください。最初はサンプルデータを1000件貼り付けてありますので、そのまま使ってみてください。

健康診断結果の貼り付け

(2) 初期設定

「設定」シートに、判定を行う産業医の氏名と、血圧の測定値が入っている列の項目名を設定します。このExcelファイルでは、血圧の測定値が2回分ある場合、1回目と2回目の収縮期血圧、1回目と2回目の拡張期血圧のそれぞれを比較し、低い方の値で判定を行います。

また「判定の前処理」ボタンを押すと、検査項目名の重複チェックを行います。重複がある場合には正しく判定できませんので、重複箇所の修正を促すメッセージを表示します。例えば「胸部レントゲン所見1」「「胸部レントゲン所見2」のように、重複しない名前に修正してください。重複がなければ「重複はありません」と表示されます。

初期設定の画面

(3) 判定条件の設定

健康診断結果を判定する条件を設定します。検査項目、演算子、比較対象1、比較対象2の欄に、判定条件を記載します。検査項目には、先ほど貼り付けた健康診断結果からプルダウンで選択します。

例えば、次のような条件を設定できます。条件には1つの検査項目のみ指定できます。複数の検査項目を同じ判定式に含めることはできません。

  • 「肝機能の判定がC以上」
  • 「血圧の値が180以上」
  • 「心電図の判定がE」
  • 「尿蛋白の初見に++を含む」
  • 「BMIが17未満、または30以上」
判定条件の入力画面
判定条件の入力画面(続き):上から順に判定され、判定結果が追記されていく

条件に該当する場合は、就業判定・ラベル・判定ログのそれぞれに結果を記録できます。就業判定は後から判定された条件の文字列が上書きされます。ラベルと判定ログには文字列が追記されるため、例えば「血圧」と「血糖値」の判定基準にそれぞれ該当した場合は「血圧, 血糖値」という文字列が表示されます。

  • 就業判定: 該当した条件の文字で上書きされる。
  • ラベル1〜ラベル10:該当した条件の文字が追記される。ラベルの文字も変更できる。
  • 判定ログ:該当した条件の文字が追記される
  • 検査項目の色設定:条件に該当した場合のセルの背景色、文字色を指定する

健康診断項目に色付けを行う時の書式を設定できます。さらに、追加で色付けを行う項目を1つだけ選ぶことができるため、胸部X線の判定が「D以上」の場合は、胸部X線の判定の欄だけでなく、胸部X線の検査所見の欄にも色付けをすることが可能です。

判定は上から順に行われ、判定結果が追加されていきます。重要な判定や優先したい判定があれば、なるべく下の方に記載するようにします。

就業判定の進め方の手順や参考値などは「医師のための就業判定支援NAVI」サイトなどをご参照ください。ただし、就業判定について基準となるガイドラインなどは存在していません。各疾患の診療ガイドラインなどを参考に、職場の状況や就業状況に応じて、それぞれの医師の判断で判定を行う必要があります。

(4) 自動判定とその結果

「判定処理」ボタンを押すと、先ほど設定した条件をもとに、健康診断結果の判定と色付け処理を行います。1000件の健康診断結果を30秒ほどで処理できます。

例えば、下記の判定例では、検査結果に大きな異常があって産業医が目視で確認した方がよい項目がある時には「就業判定」の欄に「2:要確認」と表示され、「要確認」欄に該当する検査項目の名称が表示され、さらに、該当する検査項目のセルが黄色・赤文字に色付けされます。その他、部門判定がD以上の検査項目は黄色、また、部門判定がC以上(有所見)の場合は薄いブルーに色付けされています。

健康診断の判定結果の例

自動判定処理を行うと、「判定条件」シートの一番右側の列には、今回の判定で条件に該当した件数が表示されます。該当件数が極端に多い、もしくは少ない場合には、判定条件の記載方法が間違っている可能性もありますので、ご確認ください。

判定条件の入力画面の一番右側の列に、該当した件数が表示される

判定結果の「指示事項」の文字の変更

判定結果の最初の列には「受診指示」「紹介状」「結果確認」「要面談」「対応メモ」という列が表示されています。健診結果を確認したのちにどのようなアクションを行うのか、担当者への申し送りや指示に使ってください。「設定3」シートの内容を変更すると、指示事項の文字や数を自由に変更できます。

指示事項の文字列や数を「設定3」シートから変更できる

(5) 判定結果の別名保存

「判定結果の別名保存」ボタンを押すと、上記の判定結果が、現在の日付・時刻を基にしたファイル名で保存されます。

判定結果のシートだけを別名のExcelファイルとして保存できる

新しく保存されたファイルには関数(計算式)、条件付き書式、マクロなどは一切含まれていません。オートフィルタをかけたり、項目を並び変えたりしながら、重要な所見のある検査項目を目視で確認してください。

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