意見書の書式、どうしてる?使いやすいフォーマットと記載のコツ / ひな形ファイルのダウンロード

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産業医として活動されている先生方の多くが、意見書の書き方に悩むことがあるでしょう。例えば、「この従業員さん、長時間労働が続いているけど、意見書にどう書けばいいんだろう」といった疑問や、「前任の産業医の意見書と同じような書き方でいいのかな」といった不安が挙げられます。また、「もっと分かりやすい書き方があるはずなんだけど」と感じることもあるでしょう。

産業医の意見書は、従業員の健康管理において重要な役割を果たす書類です。しかし、法令や専門家団体による標準的な書式は特に定められておらず、多くの産業医が試行錯誤しながら、それぞれの事業所に合わせた書式を使用しています。この記事では、実際の現場での経験をもとに、記入しやすく効果的な意見書の書式と記載のポイントをご紹介します。適切な書式を活用することで、産業医と事業者のコミュニケーションがスムーズになり、従業員の健康管理の質を高めることができます。

「就業上の意見を述べること」は、産業医としての専門性と判断力が最も問われる場面であり、産業医の存在意義そのものと言っても過言ではありません。

産業医の意見書の書式と構成

産業医の意見書には法令等で定められた統一的な様式はなく、事業所の状況に応じて独自の書式を作成・使用できます。事業者には5年間の保管義務があるため、適切な管理・保管が可能な発行方法を選択することが重要です。

厚生労働省は、以下のような場面で活用できる意見書の書式例を公開しています:

  • 長時間労働者の面接指導後の意見書
  • 高ストレス者の面接指導後の意見書(ストレスチェック制度)
  • 職場復帰支援プログラムにおける主治医への情報提供書・意見書
  • 両立支援プランの作成のための意見書

ただし、これらの書式例は限られた状況での使用を想定しているため、すべての場面で活用できるわけではありません。日々の産業医活動では、より詳細な情報や多角的な評価が必要になることも多いため、これらの書式例を土台としながら、職場環境や個別の事例に即した最適な形式での意見書作成が求められます。

健康問題は一人ひとり状況が異なるので、専用の書式よりも、いろんなケースに応用できる汎用的な書式のほうが、現場では使いやすいと感じます。

効果的な意見書のフォーマット

意見書は従業員の健康管理に役立つ重要な文書です。作成の際は、以下の要素を必ず含めましょう。なお、意見書を発行する際は、必ず従業員の同意を得る必要があります。意見書作成の重要なポイントは、「事実」と「産業医の意見」を明確に区別して記載することです。産業医の意見は箇条書きにすると読みやすくなります。また、次回面談の予定や意見書の有効期限なども忘れずに記載します。

  1. 面談の背景と健康状態(事実)
    • 面談の理由(健康診断の事後措置、長時間労働、ストレスチェック、上司からの依頼、自発的な相談、など)
    • 現在の状況・健康状態・健康上の問題・治療経過など
  2. 就業上の措置の提案(産業医の意見)
    • 就業区分(就業可能・要就業制限・要休業)
    • 具体的な配慮事項についての意見
  3. 今後のフォローアップの計画
    • 意見書の有効期限
    • 期限後の対応(通常勤務可、もしくは、産業医面談で再検討)
    • 次回の面談の予定

意見書のサンプル

上記のフォーマットを使った意見書のサンプルを見てみましょう。このサンプルでは、事実と意見を明確に区別し、就業判断をチェックボックス形式で示すことで、必要な対応が一目で分かるようになっています。また、期限と今後の対応を明確に記載することで、就業制限の長期化を防ぎ、確実なフォローアップを可能にしています。

産業医の意見書

発行日:20XX年XX月XX日
従業員氏名:○○ ○○ (従業員番号:123456)
所属部署:△△部 □□課

1. 面談実施日:20XX年XX月XX日

2. 面談の背景と健康状態
【面談の理由】時間外労働が月80時間を超えたため、長時間労働者の面談を実施。
【現在の状況・健康状態】
・20XX年XX月XX日に産業医面談を実施しました。
・疲労感の蓄積あり。睡眠不足や入眠困難なども見られます。

3. 産業医の意見
分類: □ 通常勤務可 / ■ 就業制限が必要 / □ 要休業

現時点では重大な健康障害は認められませんが、過重労働による健康影響が懸念される状態です。
長時間労働が続くと体調が悪化するおそれもあるため、業務の調整と体調のフォローアップが必要です。

以下の就業制限を実施してください。
・時間外労働:月45時間以内に制限すること
・深夜勤務:原則禁止

4. 有効期限と次回の予定
・意見書の有効期限:1ヶ月間(20XX年XX月末まで)
・その後、□ 通常勤務可能です / ■ 再度面談を行い、就業制限の解除・見直し等を検討します。
・1ヶ月後に産業医面談を実施します(20XX年XX月XX日)

まとめ

産業医の意見書は、従業員の健康と安全を守り、職場で必要な対応を明確に伝えるためのツールです。本記事で紹介した実務で使いやすい書式例を、ぜひ産業保健活動にお役立てください。

「事実と意見を分けて書くこと」「有効期限と今後の予定を記入すること」
この2点がポイントです。よろしければ上記のひな形をぜひご覧いただき、皆さんの現場で使っている帳票にも、ぜひ取り入れてみてください。

参考リンク:産業医の意見書の書き方

  1. 意見書の書式、どうしてる?使いやすいフォーマットと記載のコツ / ひながたのダウンロード
  2. 産業医の意見書を書くときに気をつけること
  3. 産業医のための意見書作成法:強い表現と柔らかい表現の使い分け
  4. 産業医の意見書は本当に役立っていますか? 就業上の措置を確実に実施するための方法
  5. 復職可否を単純に判断できないとき、産業医が押さえるべき基準と意見書の書き方