一般的な企業活動のほとんどは「従業員の行動」や「組織の行動」を変化させることで目標を達成します。私たち産業医が行う「健康づくり対策」「メンタルヘルス対策」「安全管理」なども同様です。個人の行動が変化し、成果が得られるまでには、次のようなプロセスが関わっています。
- 知識:何をすればよいかわかること、やり方がわかること
- 行動:その通りにできること
- 実行:現場で実行できること
- 継続:行動が継続できること
従業員や組織の行動を変化させ、目標を達成するためには、それぞれをサポートする施策が必要になります。
体重を減らすために どうすればよいか
たとえば、健康づくり活動の一環として、従業員の体重を減らすためのサポートとして、何をすべきかを考えてみます。
体重を減らすための情報は世の中にあふれていますが、いざ自分の体重を減らそうと思ったとき、何をすればよいかわからない、という人もたくさんいます。そこで、まず、その人の生活にあわせた体重管理の方法を考えます(知識)。
「食事のカロリーを○○以下にすればよい」ということがわかっても、そのための具体的な方法がわからなければ実行することはできません。そこで「白いご飯の量を、ふだん使っている茶碗のこれくらいに減らす」など、本人が実践できる具体的なやり方を考えて、その方法を身につけてもらいます(知識・行動)。また、それを毎日の生活の中で実践してもらい(実行)、継続できるような工夫やサポートを行います(継続)。
「体重を減らす」という目標達成をサポートするときには、相手がどこでつまづいているかを明らかにし、いろいろな支援技術を適切に使い分ける必要があります。
ダイバーシティーを推進するために どうすればよいか
企業や組織の中では、「ワークライフバランスの実現」、「顧客志向の達成」、「イノベーションの創出」、「ダイバーシティーの推進」、「人材の育成と活用」、「メンタルヘルス対策」など、曖昧で抽象的な目標に対して取り組まなければならない場面もあります。
こうした戦略の実行には、「個人の行動」や「組織の行動」、「組織風土」など、複雑な要素が関わってきますが、基本的には、成果が得られるまでの上記のプロセスを理解しておくことが必要です。
さまざまな施策を行っているのに、思ったほどの成果が得られていないという場合には、上記のプロセスのどこかに問題が生じているのかもしれません。やみくもに対処するのではなく、問題のあるプロセスを明らかにし、それに応じた対処法を選択することが重要です。