このサイトにときどき登場している「産業医」という職業について、これから何回かに分けて説明しようと思います。
産業医というと「会社の医務室にいるお医者さん」というイメージを思い浮かべるひともいるかもしれません。あるいは「健康診断をするお医者さん」のことだと考えてしまうかもしれません。しかし、実はその両方ともはずれなのです。
産業医という仕事をひとことで言うならば「従業員の安全と健康を守り、快適な職場環境を実現するための専門家」ということができます。その仕事の内容は、職員の健康管理はもちろん、ストレス対策、メンタルヘルス対策、休職と復職の診断、有機溶媒や粉塵などの有害物質の管理、健康教育などの広報活動、作業場や職場の安全管理、社内での健康管理体制や安全管理体制作りなど、多岐にわたっています。
50人以上の従業員がいる会社や事業所はすべて「労働安全衛生法」によって、社内に産業医を置くことが義務づけられています。中小規模の会社では近所の開業医や健診機関の医師などに非常勤の産業医を依頼することが多く、従業員が千人を超える大企業のほとんどは、常勤の産業医を社員として雇用しています。
職場の安全を守るために働くのは産業医ばかりではなく、総括安全衛生管理者、衛生管理者、作業主任、現場監督、部署の責任者、社内の保健婦との協力は欠かせません。また、外部の健診機関、医療機関、環境測定機関などとも連携します。
産業医の仕事は大きくわけて、有害物質の管理、工場や事務所内の環境測定と改善を行う「作業環境管理」と、作業姿勢や作業時間の管理、有害物質への曝露の測定や、身を守るための保護具についての管理を行う「作業管理」、健康診断や休職・復職時の診断、健康教育や疾病予防などの「健康管理」の3つがあり、これを「産業保健の三管理」と呼んでいます。
この「三管理」は産業保健の基本として長く親しまれてきましたが、労働者を取り巻く環境は時代とともに大きく変化し、それに対応して産業医活動の重点も変わってきています。現代の産業医活動のキーワードは「リスクマネージメント」と「パフォーマンス」です。次回からは、この2つのキーワードを中心として、従業員、管理職(上司)、経営者のそれぞれに対して、産業医がどのような仕事を行っているのか、また、産業医に何が期待されているのか、説明していきたいと思います。
■ 参考
□ 産業医の仕事 (1) 産業医活動のキーワード
□ 産業医の仕事 (2) 従業員と産業医の関わり
□ 産業医の仕事 (3) 管理職 (上司) と産業医の関わり
□ 産業医の仕事 (4) 経営者 (事業者) と産業医の関わり