ときどき「復職可の診断書を会社に提出したが、産業医に却下された」「産業医は会社の手先だ」という話を聞くことがあります。主治医の診断書と産業医の意見書、会社はどちらを優先すべきなのでしょうか。産業医は本当に会社の味方なのでしょうか。
● そもそも契約関係が違うし、目指すゴールも違う
病院の医師(主治医)と患者の間には治療契約が存在し、主治医は患者の生命と健康を最優先に治療を行います。主治医が目指すのは日常生活レベルの回復、つまり退院して家で暮らせるようになることです。
産業医は社員との直接の契約関係にはなく、会社と業務契約を結び、会社が安全配慮義務を果たす手伝いをしています。産業医が目指すのは就業可能レベルの回復、つまり社員が元気に働けるようになることです。
● 社員の味方だとか会社の味方だとかではない
つまり産業医は社員の味方だとか、会社の味方だとか、そういう立場ではないのです。あまり「対立」や「中立」とかいう考えにこだわると、社員や会社への健康支援活動がやりづらくなることがあります。
● 主治医の診断書と産業医の意見書の違い
主治医は患者の利益を最優先する立場にあります。患者に「復職可能と書いて欲しい」とか「自宅療養が必要と書いて欲しい」と頼まれると、その意向を最大限に取り入れた診断書を書きます。
産業医は、健康上の問題を抱えた社員が安全に働くために、本人の状態・仕事の状況・就業規則などを総合的に判断して、会社に意見を述べます。最終的には、産業医の意見を参考にしながら、就業規則や判例に従って会社(人事担当者)が判断を下します。
● トラブルを避け、スムーズに職場復帰を進めるために
復帰のトラブルの大半は、職場復職に関する認識の食い違いが原因です。トラブルを避けるには、休業している時から定期的に産業医面談を行い、職場復帰の進め方について早い段階から話し合い、時間をかけて共通認識を作っていくとよいでしょう。
参考:
・制度だけではうまくいかない ~うつ病の復職について~
・うつ病の人をうまく励ますコツ
・産業医とは? 産業医の仕事とは ?