「職場のメンタルヘルス不調:困難事例への対応力がぐんぐん上がるSOAP記録術」(東京大学職場のメンタルヘルス研究会、川上憲人、難波克行、小林由佳:誠信書房)
新しく発行された書籍のご案内です。ちょっと長いタイトルですが、職場のメンタルヘルス不調の事例対応に困っている産業医・産業看護職・産業心理職の方にはぜひ手にとってほしい1冊です。
面談記録の書き方がわかる! SOAPでの面談記録事例を多数掲載
産業保健の現場で労働者の方と面談をしていると、メンタルヘルス不調などの病気の症状だけでなく、職場の業務、職場の環境、人間関係、家庭内の問題など、いろいろな問題点が複雑にからみ合って「問題」が生じていることがわかります。また「本人が感じている問題」の他に、「上司が感じている問題」や、「人事担当者が感じている問題」など、関係者の数だけ問題の数は増えていきます。ただ単に「病気」や「症状」に注目しているだけでは、こうした職場の問題を解決することはできません。
面談などで出てくる情報を、どう整理して、どう判断していけばいいのか、短い時間の中でどうやって効率よく情報を整理していくか、という時に役に立つのが「SOAPによる面談記録」です。そう、臨床の現場でカルテを書くときに使っている「SOAP」が、産業保健の現場でも役に立つのです。
本書では、産業保健領域でSOAP形式を用いて面談記録を書くときに、どのような点に着目すれば良いか、どのような記載方法にするか、面談記録の具体例を交えながら詳細に解説しています。
- 第2章: POMRを用いて面談記録を作成するメリット
- 第3章: POMRを用いた面談記録の作成手順
- 第4章: POMRを用いた面談記録の書き方
- 第5章: サマリーの書き方
- 第6章: 面談記録の作成時の注意点
SOAPで記録を書くと、さまざまなメリットがあります。「情報を共通の様式でわかりやすく整理できる」だけでなく、「事例対応に必要な情報、不足している情報がわかる」「アセスメントと対応方針が明確になる」「他の産業保健スタッフとの情報共有や、職場の関係者との情報共有が適切に行える」「専門家としての判断とその根拠を確実に記録できる」など。そして最大のメリットは「ケース対応力がぐんぐん上がる」ことです。
リアルなケース教材として活用できる! 11の事例を掲載
もうひとつの本書の特色は「リアルなケースを多数収録した教材として活用できる」ことです。本書には次の11の事例を収録しています。いずれも、職場の様子、面談時の様子がありありと想像でき、職場の上司や同僚、産業医、人事担当者の悩みがリアルに伝わってくる事例です。
- 第8章: プライベートの問題があって休職を繰り返す事例
- 第9章: 妄想のため問題行動を繰り返す事例
- 第10章: 休業中にたびたび連絡が取れなくなる事例
- 第11章: 衝動的・感情的な行動のため職場になじめない事例
- 第12章: 借金などプライベートの問題があった事例
- 第13章: 1年たっても仕事をまかせられない新入社員の事例
- 第14章: 不定愁訴から欠勤を繰り返す事例
- 第15章: 対人関係に強い不安を感じる事例
- 第16章: 希死念慮を訴えるが受診につながらない事例
- 第17章: 職場の対人関係上のトラブルを繰り返している事例
- 第18章: 復職を焦ったため再休職に至った事例
それぞれの事例には、その特徴に応じたアセスメントや対応方針の立て方についての解説が記載されています。個人学習やグループ学習のケース教材としても役に立ちます。さらに、それぞれの事例にSOAP形式の面談記録のサンプルが掲載されており、ケースの記録をどのように作成すればよいのか、具体的に理解できます。
本書をおすすめしたい方
- 社員との面談で得たさまざまな情報を、どのように整理し、どのように記録すればよいか迷っている産業保健スタッフの方。
- 社内の他の産業保健スタッフとどのように情報共有をすればよいか迷っている産業保健スタッフの方。
- 職場のメンタルヘルス不調事例への対応スキルを向上させたいと思っている産業保健スタッフの方。
産業保健領域で、ここまで詳しく面談記録の書き方を解説した書籍や、関係者の息づかいまで感じられるリアルな事例を取り上げた書籍は、今までにありません。「職場のメンタルヘルス不調:困難事例への対応力がぐんぐん上がるSOAP記録術」(東京大学職場のメンタルヘルス研究会、川上憲人、難波克行、小林由佳:誠信書房)を、ぜひ、おすすめします。
産業保健領域での面談記録の書き方の解説動画を作成しました!
産業保健領域でのSOAP形式の面談記録の書き方を解説する動画(全5回)を作成しました。ぜひご覧ください。