「うつ病の人を励ましてはダメと言われるが、何と声をかければいいのか」「何ヶ月も会社を休んで、やっと出てきたが、とても治っているとは思えない」という声をよく聞きます。うつ病の同僚や部下に対して、どのように接すればいいのでしょうか。
うつ病の苦しみ
うつ状態になると、次のような状態が続きます。
- 食欲がない。
- 眠れない。特に朝早く目が覚め (午前3~4時)、その後まったく眠れない。
- 疲労感がとれない。
- 頭の回転が明らかに落ちている。
- 今まで楽しかったことが楽しくない。それをすることが面倒だ。
特に職場で著しいのは「4. 頭の回転が明らかに落ちている」という症状です。たとえば風邪をひいて熱が出たときや、ひどい二日酔いのとき、頭の回転が落ちて仕事がはかどらないという経験があるでしょう。うつ状態の時も、それと同じようなことが起こります。しかも二日酔いと違って、そうなった原因も、いつまで続くのかもわかりません。
仕事熱心で完璧主義、まじめ人間ほどうつ状態になりやすいと言われます。そういう人にとって、この状態がどんなにつらいことでしょうか。「検査では異常が無いので様子を見ましょう」と病院では言われるが、体調は明らかにいつもと違う。集中力が無い。書類を読んでも頭に入らない。仕事はちっとも進まない。勤めを続ける自信が無い。いっそ消えてしまいたい……と、面談のときに涙をポロポロとこぼしはじめるのです。
病気のせいでパフォーマンスが一時的に落ちる
うつ病の特徴は「病気のせいでパフォーマンスが一時的に低下すること」です。治療開始が遅くなればなるほど回復も遅くなります。また、回復の途中でアクセルをふかしすぎると、すぐに調子を崩してしまいます。会社を休むほどひどいうつ病の場合は、3ヶ月の休業の後、約1ヶ月の慣らし出社を経て、さらに半年は業務制限を行うようにしないと、うまく仕事に復帰できません。
パフォーマンスの低下がきっかけで、うつ病が発見されることもあります。職場や家庭で、いつもと違う様子の変化に気づいたら、本人にそれとなくたずねてみてください。上記の「うつ状態のセルフチェック」の中で気になることがあれば、「疲れているならお医者さんに行ってみれば?」などと、産業医や精神科医に相談するよう勧めてあげましょう。
職場復帰してきた人にどう接するのか
うつ病の人と接するときの注意点として、励まさない、重大な決断をさせない、無理に気分転換に誘わない、といったことが知られています。それを聞いて「じゃあ何と言えばいいのか」と、疑問に思う人も多いでしょう。
どんなにうつ病のことを理解していても、相手を100%傷つけない言葉などありません。あまり難しく考えず、「早く元気になって欲しい」、「元気になるまで待つよ」、「ゆっくり休んでいいよ」、「力になってあげたい」と、相手を受け止め、支える気持ちを言葉で伝えることが大切です。気持ちを言葉にして伝えれば、きっと相手の心に届き、回復の助けになります。
そろそろ元気になったみたいだから、食事に誘ってみようかな、どうしようかな、と迷っているのなら、「そろそろ復帰して3ヶ月たつね。元気も出てきたようだし、また食事でもしながら話をしたいと思うんだけど、どうだろうか。しんどいなら今日は無理しないでいいよ。また今度にしよう」と、気持ちをそのまま伝えてみてはどうでしょうか。
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