質問:傷病手当金の申請書を主治医が書いてくれない場合の対応方法
主治医が復職可能の診断書を作成して以降、傷病手当金の申請書に記入してくれない場合があります。その場合に、どのように対処すればよいでしょうか。
回答:申請書とは別に、産業医に健康保険組合に向けて意見書を作成し、申請書と一緒に提出する
傷病手当金の申請にあたって、初診日よりも前、もしくは復職の診断書を発行した後など、病院の医師に申請書の記入を断られたときなどは、産業医が「別紙で」書類を作成し、申請書に添付して健保に提出する、という方法があります。
通常、傷病手当金の申請書には、患者の治療を行った医師が記入を行います。しかし、主治医が申請書に記入してくれない時は、産業医が意見書を作成し、申請書に添えて健保に提出するという方法を取れます(参考:平成26年の厚労省の通達 質問1参照)。産業医が主治医の代わりに申請書に記入するのではなく、申請書とは別の書類を作成する点に注意が必要です。
(平成26年の厚労省の通達「傷病手当金の支給に係る産業医の意見の取扱いについて」より)
また、被保険者が、診療を受けている医師等から労務不能であることについての意見が得られなかった場合、当該医師等とは別の産業医に対し、労働者としての立場で就業についての意見を求め、意見を求められた当該産業医が任意に作成した書類を保険者に提出することは差し支えない。この場合、規則第84条に規定する医師等の意見書には、労務不能と認められない疾病又は負傷に係る意見の記載を求めることとされたい。
産業医の作成する意見書には特定の書式はありませんが、傷病手当金の申請書にならって「患者氏名」、「傷病名」、「労務に服することができなかった期間」、「上記期間中における労務不能と関連する主な原因・症状・経過、労務に服することができなかったことに関する産業医の意見」、「産業医が意見書を作成することになった理由」、「作成日」、「事業所所在地」、「事業所名」、「事業所電話番号」、「産業医氏名」、「捺印」などの記載があればよいでしょう。
産業医が作成する書類には「患者を直接診察・治療した医師が、診察結果をもとに、医学的な診断結果や労務不能であったことを申請書に記載する」のではなく、「産業医として労働者本人や事業者から把握できる情報をもとに、労働者が休業していた状況や関連する症状、診察医が申請書に記載してくれなかった理由などを記載」します。このため、書類作成のハードルも低いと思われます。
上記の事例においては「X月X日よりXX病にて休業中。X月X日づけで主治医が復職可能の診断書を発行し、その後、復職に向けて外出練習などを行っている。X月X日に産業医面談を実施したが、まだ十分に外出練習が行えておらず、復職後の再発を防ぐために引き続き休業を継続することとし、X月X日現在も休業中である(もしくはX月X日に復職した、など)。復職の診断書を発行した後の期間については、主治医が傷病手当金の申請書への記入を行ってくれないため、産業医が本書類を作成した」などの記載があるとよいでしょう。
また、同じ通達の質問2に、主治医が復職可能と診断していても、産業医や会社が復職不可と判断して休業を継続している場合も、主治医の意見だけでなく、産業医の意見も踏まえて傷病手当金の支給可否について判断するように記載されています。つまり、主治医が復職可能の診断書を書いた後も、実際に就労できていないのであれば、傷病手当金は通常は支給されるということのようです。
なお、健保組合の担当者も、こうした場合に不慣れなことが多いので、関連する通達のURLを伝えて、産業医が書類を作成したことを説明しておくとスムーズです。