大人のための研修デザイン 第6回「後は現場まかせ?無責任な “やりっぱなし” 研修」

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研修が「やりっぱなし」になる理由

職場での研修の目的は、研修で学んだことを実践して、事業活動に生かすことです。つまり、仕事に必要な知識や行動を身につけ、実際の現場で成果を出すことが求められています。しかし、どういうわけか、多くの職場では「研修は研修、仕事は仕事」と、研修と仕事とが別のものとして扱われていることがあります。なぜ、研修と現場との間にこうした隔たりがあるのでしょうか。

その理由は、研修を実施する側と、研修を受ける側とのそれぞれに「貴重な業務時間を使った研修なのだから、その成果を仕事に役立てなければならない」という意識が欠けていることです。

まず、研修を実施する担当者は「自分たちの仕事は、研修を実施するところまでだ」と考えていることが多く、研修で学んだことを職場で実行することについては「参加者、あるいは、職場をマネジメントする上司の仕事だ」と、現場に丸投げされているのです。

一方で、研修の参加者も「研修で学んだ知識や情報が、職場ですぐに役立つとは限らない」とか「忙しいので、研修で学んだことを実践している暇がない」などと考えており、研修で学んだことを積極的に職場に生かそうという意欲が低いのです。

つまり、厳しい言い方をすると、こうした状況が続く限り、研修をいくら実施しても参加者の行動は変わらず、仕事の成果にはつながらないのです。

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参加者の「行動変容」が研修の成否を分ける

研修の本来の成果を達成するためには、研修が終わった後の参加者の行動をどのように変えていくか、つまり、どのように行動変容を促していくかとを考えた上で、研修を設計する必要があります。

研修で学んだことを職場での実践につなげるためには、①実践しやすい環境を作る、②継続しやすい環境を作ることが大切です。そのためには、参加者の上司(職場の管理者)の協力が欠かせません。

そのためには、事前に職場の管理者と話をしておき、職場のニーズに耳を傾けるようにします。職場の管理者がどのような問題を感じているか、また、部下にどんな行動をとって欲しいと思っているかを聞き出します。そして、研修の内容が、職場の業務内容や達成目標とどのように関連しているのか、研修で得た知識を職場の行動にどのように生かせば良いのかを明確にしていきます。

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職場の管理者には、研修後の部下の行動変容をフォローアップし、うまく行動できるようサポートするという大切な役割があります。研修の内容がと職場の成果につながっている、ということが、職場の管理者に理解してもらえたら、研修はほとんど成功したようなものです。

また、行動変容が起きるまで研修を終わらせない構成にする方法も考えられます。研修後の行動の変化についてフォローアップを続けるのです。本人からの自己申告でもいいですが、管理者に評価してもらうようにするとさらに効果的です。研修直後はうまく行動を起こすことができても、その後、また元に戻ってしまうこともあるため、2~3ヶ月おきに、2~3度繰り返すと確実です。

フォローアップ研修を行うと効果的

研修後の行動を定着させるために有効な方法は、数週間後にフォローアップ研修を開催することです。フォローアップ研修では、前回と同じメンバーが集まり、お互いの行動計画の状況を報告し合い、それを振り返ってもらって、新たな気づきを得る、という、経験学習のプロセスをうながします。

または、オンラインの掲示板や、メールなどを利用して、バーチャルに研修を継続するという方法もあります。そのためには、参加者が積極的に連絡を取りあって意見交換を行えるよう、研修の事務局が積極的に働きかけ、掲示板の書き込みの管理や、議論のファシリテーションなどを行わなければなりません。

うまく行動できなくてもいい理由とは

大人の学習には、経験から学ぶことがとても大きな意味を持ちます。たとえ、うまく行動できなかったとしても、それは失敗ではありません。やろうと思っても行動できなかった、行動してみたけれど、思うような結果が出なかった、こうした経験すべてが学びのヒントになります。

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うまく行動できた場合は、なぜうまくいったのかを振り返り、うまく行動できなかった場合には、なぜうまくいかなかったのかを振り返ります。そこから新たな気づきを得て、次の実践につなげることができれば、それこそが成功なのです。こうした経験学習のプロセスをうまく回していくことが、研修の効果をより高めてくれます。


シリーズ 「大人のための研修デザイン」

参考文献