大人のための研修デザイン 第1回「あなたの研修は、どこがダメなのか?」

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「この研修、時間のムダ……?」と思ったことはありませんか

職場では、毎日のように、いろいろな研修が行われています。業務に直結する内容のほかにも、ハラスメント研修、コンプライアンス研修、メンタルヘルス研修、情報セキュリティの研修、管理職研修など、実にさまざまです。

しかし、正直なところ、そうした研修を受ける時間がもったいないとか、面倒くさいと感じたことがある人も多いのではないでしょうか。また、研修中もずっとPCを開いて別の仕事をしている人や、居眠りをしている人を見たことはありませんか。

「研修なんて、無難にやりすごせばいい」って、本当?

もしかして、多くの人が「研修なんて、適当にやり過ごせば良い」と、思っているのかもしれません。とりあえず無難に課題をこなし、アンケート用紙に、よかった、やや満足などと、あたりさわりのない回答を書き込んでおけば良いのだと、実際、多くの人がそう考えているのではないかと思います。

研修後のアンケートが示す「満足度」のワナ

研修の効果をはかる方法として、研修後にアンケート調査を行うのが一般的です。回収した結果を集計して「今回の研修は満足、または、やや満足と回答した人が90%を超えており、とても好評でした」などという報告したりします。

しかし、この満足度という数字は、小手先のテクニックでいくらでも操作できるのです。たとえば、参加者が自分のことを話す時間を多く取ったり、グループワークを盛り上げるような工夫をしたり、飽きがこないよう楽しめる工夫をしたり、研修の最後をうまく盛り上げたりすると、参加者に「大切なことを学んだ」「ためになった」「楽しかった」と感じさせることができ、研修の満足度がぐんと高まります。

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また、こうした満足度の高さと、研修の目的が達成できたかどうかは、全く別であることが知られています。例えば、メンタルヘルス研修の目的は、参加者が自分自身のストレス対策をうまく行えるようにすることや、部下のメンタルヘルスケアをうまく行えるようになることです。いくら研修の満足度が高くても、そうした職場の問題解決に役立たなければ、研修の本来の目的は達成できないのです。

なぜか研修の効果よりも満足度が重視される、本末転倒ぶり

研修の効果を本当に正しく把握するためには、研修後の参加者の行動の変化を追跡調査する必要があり、とても手間がかかります。また、多くの人が「研修なんて、そんなに役に立たないものだ」と考えています。

そのため、わざわざ時間と労力をかけて本来の効果を検証したりせず、満足度という、手軽に集計ができて、そこそこ良い結果が得られる指標が重宝されているのです。

効果的な研修を実施するための「インストラクショナル・デザイン」

企業の研修には、参加者全員分の人件費という大きなコストがかかっています。そうしたコストに見合うだけの成果を出すためには、どんな工夫が必要なのでしょうか。これから5回の記事ではインストラクショナル・デザインという研究分野から、効果的な研修を行うヒントをいくつかご紹介します。研修を企画、作成するときの参考にしてもらえればと思います。


シリーズ 「大人のための研修デザイン」

参考文献