健康上の問題がある社員への対応の基本手順

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10月に外部のセミナーで、企業のメンタルヘルス対策について講演することになりました。

これまで、多くの企業担当者から「厚労省の手引きを参考にしているが、休業者への対応がうまく行かない」という声を聞いてきました。どうしてうまく行かないのか、彼らの話を分析してみると「メンタルヘルス事例は個別性が高いため、目の前の問題にばかり注意が向いており、基本的な理解や対応がおろそかになっている」という状況が見えてきました。

そこで21日のセミナーでは、非専門家でも「それなりに適切な対応」ができるようなガイドとツールを作成し、紹介しようと考えています。せっかくなので、その制作過程や成果をブログでも公開します。断片的なメモのような記事もあるかと思いますが、参考になれば幸いです。

健康上の問題がある社員への対応の基本手順

健康上の問題がある社員に対して、休業・職場復帰・就業制限などの人事的な措置をとる場合、その対応の基本手順は次の通りである。

(1) 産業医の意見書と主治医の診断書を入手する(書面で)。
(2) 意見書と診断書をふまえ、具体的な措置の内容を人事が決定し、連絡書を各部門に送付する。
(3) 上記の措置には最長で1年間の有効期限を設け、定期的に内容を見直す。
(4) 上記の書類や対応記録などは、個人名でファイルし、人事記録として所定の期間保存する。

主治医の診断書の取り扱い

診断書は本人が取得し、人事あるいは健康管理担当者に送付する。診断書にはプライバシー性の高い医療情報が記載されているため、医療職や衛生管理者などに取り扱わせることが望ましい。その場合、担当者は診断書の内容(出社可能・休業が必要・就業制限が必要、など)を人事に連絡する。病名をそのまま人事に伝えることは避ける。

産業医の意見書の取り扱い

産業医は、本人、上司、人事担当者、産業保健スタッフ、主治医の診断書などから得た情報を総合し、就業上の配慮についての意見書を作成して人事に送付する。意見書には、現在の状況、産業医の意見、有効期限を記載する。

現在の状況:病状の経過や現在の状況などを記す。就業上の措置について説明するために必要な内容のみを、人事や職場が理解できる表現で記載すること。診断名や治療内容・処方内容などをそのまま書くことは避ける。

産業医の意見:疾病の有無や治療の必要性の有無、出社(就業)できるかどうか、どのような条件を整えれば出社(就業)できるかなどを簡潔に記す。職場の状況や社内規則とも整合性を持たせること。主治医の意見と産業医の意見が異なる場合は、その合理的な理由を説明できるようにしておく。

有効期限:上記の意見の有効期限を記載する(最長1年間)。有効期限が切れた後、就業制限を解除し、通常業務が可能とするのか、再度面談を行って意見書を再発行するのかも明記する。

就業上の措置に関する連絡書の発行

産業医の意見書、主治医の診断書、本人や上長との面談結果をもとに、人事は本人の就業上の扱いについて決定する。その内容について連絡書を作成し、関係各所に送付する。主治医や産業医の意見と人事の決定が異なる場合は、その合理的な理由を説明できるようにしておく。

連絡書には、就業上の措置の内容や連絡事項などを記載する。産業医の意見書、休職の発令書など、必要な書類を添付してもよい。ただし、主治医の診断書は添付しないこと。

連絡書は、所属長や管理監督者、産業医など産業保健スタッフに送付する。また、休業や復職などのときは、本人にも送付するとよい。

2階を建て増す前に基礎部分を見直そう

上記の手順をおろそかにしたままメンタルヘルス対策に取り組むことは、家の基礎部分がシロアリにくわれてボロボロなのにそのまま2階を建て増ししようとする、あるいは、カラダの健康管理すらできてないのにココロの健康管理に手を出すようなもので、いずれ問題に突き当たります。