質問:主治医と面会したい時の対応の留意点
復職後の社員の体調がなかなか改善せず、勤怠も不安定になりがちです。業務パフォーマンスも以前ほど回復いません。主治医に相談するように本人には伝えているのですが、こうした情報が主治医に確実に伝わっているかどうかは不明です。そのため、適切な診断や治療が行われていないのではないかと考えています。現在の状況や今後の治療について主治医の見解を確認したいので、会社の担当者(人事担当者もしくは上司など)が主治医と面会することを検討していますが、本人への同意の取り方や、主治医への連絡など、どのように進めればよいでしょうか。
回答:主治医との面会の目的や伝える内容を整理し、本人の同意を得た上で、方法についてクリニックに確認を
対応のポイントを3点、解説します。
(1) 目的・主治医に伝えること・主治医にたずねることを事前に整理しておく
まず、主治医と面会する目的、主治医に伝えること、主治医にたずねることなどを確認しておきましょう。主治医と面会するという貴重な機会を有効活用するためにも、事前の準備が重要です。現在、何が問題となっているのか、主治医と情報交換したいことは何か、なぜ主治医と連携を取る必要があるのか、今後、ケース対応をどのような方針で進めていきたいのかについて、産業医を含めた社内の関係者で議論しておきましょう。
主治医に伝えることは、あらかじめ準備をしておきましょう。会社での様子や体調について、主治医に正確な情報が伝わっていないため、適切な治療が行えていないということもあります。今回のケースでは「体調がなかなか回復していない」、「勤怠も不安定」、「業務パフォーマンスが以前ほど回復していない」という状況を伝えることが、治療に役立ちそうです。
その際には「体調不良で先月は何回休んだ」「何回遅刻した」など、なるべく客観的で定量的な、正確な表現をするように心がけましょう。また「急に興奮して怒り出すことがある」、「同じようなミスを何度も繰り返す」など、職場で気になっている本人の行動の特徴についても主治医に伝えておくとよいでしょう。
さらに、「この勤怠や業務パフォーマンスでは仕事を続けられないので、休職させることを検討している」、「配置転換や業務の変更を検討している」など、職場で検討していることがあれば、その情報も伝えておきましょう。
その上で、「職場では、どのように対応するのがよいでしょうか?」、「本人への接し方や業務の与え方について、アドバイスをいただけませんか?」と、職場での対応について主治医の助言を求めましょう。
この時のポイントは「主治医の見解は参考意見にとどめる」ということです。会社の対応について、その場で結論を出す必要はありません。例えば、会社側は「現状の勤怠や業務パフォーマンスでは仕事にならないので休ませたい」と考えていても、主治医は「休ませても体調がすぐに良くなるわけではない。活動性や生活リズムを維持するためにも勤務を続けながら治療をしたい」と考えていることもあります。
職場の考えや対応方針と異なることを言われた時には、「そのようにおっしゃる理由はなんでしょうか?」、「勤務を続けながら治療をする方がよいのはなぜですか?」などと、主治医がそう考えている「理由」や「背景」などを質問した上で、「持ち帰って検討する」と伝えておきましょう。
このように、主治医と面会する目的、主治医に伝えること、主治医に質問すること、想定される返答と、その後の対応などについて、人事担当者・上司・産業保健スタッフ・産業医などで、事前に検討しておくようにしましょう。
(2) 本人の同意を得る
主治医との情報共有を行うことについて、本人に説明し、同意を得ておきましょう。個人情報保護法の第三者提供の例外事項(人の生命・身体または財産の保護に必要な場合、など)に当てはまる場合には、本人の同意は不要ですが、原則的には同意を得ておいた方がスムーズです。今回のケースでは、本人には「復職後、しばらく経つが、体調や勤怠などが不安定で心配していること」を伝え、「主治医と直接話をして対応のアドバイスをもらいたい」旨を説明しましょう。
(3) 方法・日時・費用について事前に主治医に確認しておく
主治医との面会の方法、時間帯、費用、本人の同席の有無などについては、医療機関ごとに対応ルールが異なります。(1)(2)を済ませたら、最後に医療機関に連絡してどのような方法を取れば良いかを確認しておきましょう。直接の面会ではなく、書面やFAXでの情報共有を提案されるかもしれません。また、本人の同意について書面への記載を求められることもあります。