産業医面談に活用しているFileMakerデータベース

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今回は、少しマニアックな話になりますが、私がいつも産業医面談で使っているデータベースをご紹介します。面談をしている従業員の一覧管理のほか、面談記録の作成や各書類の作成、人事担当者や職場との連携、面談の案内作業など、私の業務には欠かせないツールとなっています。

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データベースの機能の紹介

データベースはFileMaker Proで作成しており、次のような情報を管理しています。

(1) 従業員名簿

従業員の情報としては、氏名(戸籍氏名、社内通称)、年齢、性別、所属事業所、部署、内線番号、社内メールアドレス、在籍状況(在籍、退職)、雇用形態(正社員、契約社員、派遣社員、パート社員)などを管理しています。こうしたデータは、月に1度、従業員名簿から一括して登録しています。

(2) 事例一覧

面談した事例については、さらに、就業状況(通常勤務、就業制限、休業中)の区別や、フォローアップの間隔、次回の対応時期、休業中の連絡先(メールアドレス、電話番号)、職場の上司は誰か、面談の案内が済んでいるかどうか、などの情報を管理しています。

(3) 面談記録の作成

産業医面談の記録もデータベースを使って作成しており、面談実施日、対応方法(面談、電話、メール)、相手(本人、家族、上司、人事担当者)、面談を行ったスタッフの氏名などの他、面談記録、上司・人事への報告事項、今後のフォローアップの予定、などを記録します。

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面談記録はPOMR形式で記入します。POMRとは、Problem Oriented Medical Recordの略称で、医療現場で使われているカルテの標準的な書きかたです。「経過」「Problem List」「来談の経緯」「Subjective」「Objective」「Assessment(医学面、就労面、生活面)」「Plan」「上司や人事担当者への申し送り」「次回の対応」のそれぞれを記入します。新しい記録を作成するときには、自動的に前回の記録から必要な内容がコピペされます。作成した面談記録は印刷してカルテにとじたり、PDFファイルで保存したりします。

(4) 職場や人事担当者への報告

それぞれの面談記録には、「上司や人事担当者への報告事項」という欄を作っています。職場での措置に必要な情報を、本人の同意を得た上で、上司や人事担当者にメールで送信しています。もちろん、職場での措置が必要ない場合には、何も報告しないこともあります。

報告メールは、課長と部長など、直属の上司とその上の上司に送信しています。人事担当者には、1週間分の申し送りをまとめて1通のメールで送信し、毎週の打ち合わせの資料として用いています。

(5) 面談の案内

月に1度、データベースの画面を見ながら、来月に面談する人に日程の案内を送っています。出社中の従業員には、都合のよい時間を選べる予約システムのURLを案内して、日程調整の効率化を図っています。休業中の従業員には、こちらで指定した日時をメールや電話で案内します。

(6) 書類の作成

産業医の意見書や診療情報提供書を作成できます。「海外赴任時の意見書」「精密検査を依頼する紹介状」など、よく使う文面をあらかじめ用意しています。作成した書類はプリンターで印刷したり、PDFファイルとして保存したりします。

データベースを使うと「2016-02-20 意見書 従業員番号 氏名.pdf」という名前のファイルを所定のフォルダ保存し、関係者へメールで案内するという作業を、ワンクリックで実行できます。

(7) データの書き出し、バックアップ

万が一、データベースのファイルが使えなくなってしまうと、日々の業務に大きな支障が出てしまいます。そこで、毎日、ファイルを自動的にバックアップしています。

また、週に1度、対応中の事例の一覧をExcelファイルに書き出すようにして、他の産業保健スタッフとも共有しています。「氏名、就業状況、次回の対応予定、フォローアップの間隔、自宅の連絡先」などの情報を書き出しているので、もし、何かの原因でデータベースが使えなくなっても、当面、困ることはないでしょう。

役に立っていること

このデータベースが産業医の業務にどう役立っているのかをご紹介します。

(1) 対応中の事例を一覧で確認できる

会社を休んでいる人、復職した人、そのほか、病気やケガの治療中の人など、定期的に産業医面談を行う従業員が増えてくると、何らかのリストを使って管理する必要が出てきます。

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データベースを使って一覧表を管理していると、誰が休んでいるか、誰が復職したか、今月面談する人は誰か、来月面談する人は誰か、次の面談はいつか、などの情報を、いつでも確認できます。

また「来月の面談の案内を送らないといけない人」、「今週面談し、人事担当者に申し送りがある人」、「面談したけれど、まだ面談記録の作成が終わっていない人」など、条件に当てはまる人を検索できます。

(2) 作業の抜け漏れを防げる

対象の従業員の数が増えても、データベースでリストを管理していれば、面談の案内を送り忘れるとか、面談記録を作成し忘れるとか、人事担当者や職場への報告をし忘れるとか、そうした作業の抜け漏れを防げます。

(3) 作業時間を短縮できる・転記ミスを防げる

データベースを使うと、書類を作成するときに、いちいちファイル名をつける必要もありませんし、従業員番号や氏名、所属などを転記する必要もありません。

あらかじめメールアドレスや文章を設定しておくと、面談の案内のメールを自動的に送ることもできます。紹介状や意見書などの書類も、いくつかの文面をあらかじめ作っておくと、ごく短時間で作成できます。

データベースを使うと、こうした「よく行う作業」を、ワンクリック、あるいは自動的に、間違いなく行えるように設定できるので、作業時間を減らせるだけでなく、転記ミスやメールの宛先間違いなども防げます。

(4) 人事担当者との連携

産業医の仕事には、従業員本人をサポートするだけではなく、職場でどんな対応をすれば良いのか、人事担当者に助言をすることも必要です。

そこで、面談後に、人事担当者や職場に何を報告するのか、申し送りの内容をデータベースに記入しています。その内容を人事担当者にメールで送信し、定期的な打ち合わせの時に参照しています。打ち合わせの効率化などにつながっているようです。

(5) 職場との連携

従業員の健康管理のためには、職場の上司との連携が欠かせません。そこで、面談後の申し送りを、それぞれの上司にもメールしています。職場で何か心配なことや気にかかることがあるときには、上司から連絡をもらうこともあり、事例対応に役立っています。

(6) 産業保健スタッフとの連携

面談記録には「経過」「問題点(Problem List)」「現在の状況」「アセスメント」「今後の対応方針」「職場や人事担当者への申し送り」「次回の面談時期」などが決まった形式で書かれているため、直近の面談記録を見るだけで、現在の状況や問題点、今後の対応方針などが一目でわかります。

そのおかげで、産業医、看護職、心理職、衛生管理者など、産業保健スタッフの間で、簡単に情報共有できます。事例対応についてのディスカッションもしやすく、また、安心して事例対応を引き継げます。「担当者が不在のため、状況がよくわかりません」という事態を避けられます。

(7) 復職後の再発防止に役立っているかも

このようなデータベースを用いることで、作業効率が上がるだけでなく、人事担当者、現場の上司、産業保健スタッフとの情報共有にも役立っています。こうした連携が、復職後の再発防止にも役立っているのではないかと思います。