前回の記事では社員のモチベーションに関係するさまざまな因子を紹介しました。その中で最も重要なモノは何か、大規模な調査が行われました。その結果、他の因子に強い影響を与え、最終的にモチベーションを高め、ストレス反応を低くしているのは「組織公平性」であることがわかりました。
■ 不公平があっても、手続きが公平なら納得できる
組織公平性には次の4つの尺度があります。
- 分配の公平
- 手続きの公平
- 情報的な公平
- 相互作用的な公平
この中で、最もわかりやすいのが「分配の公平」です。給与、役割、仕事の割り振りなどの分配が公平かどうかというものです。しかし、現実には、すべての従業員に公平に分配することは困難です。
モチベーションへの影響を考えると、実は「分配の公平」よりも「手続きの公平」のほうがずっと重要です。つまり、現実には分配の不公平が生じていても、それを決めるプロセスが公平であればよい、ということです。
しかも、組織公平性は主観的な尺度です。実際に公平であることはもちろん大切ですが、公平性を印象づけ、うまくアピールできれば、その効果はさらに高くなります。
情報的な公平とは、社内の情報が従業員に公平に与えられているかどうかという尺度です。相互作用的な公平とは、従業員同士が、職位や年齢、性別に関係なく、お互いの人格を尊重して接しているかという、対人関係の尺度です。
■ 公平でないマネジャー改造計画
ある会社でマネジャーの多面評価が行われました。その結果、「公平でない」と悪い点数を付けられたAさんが、人事トレーナーのところに寄こされてきました。
Aさんは、あるプロジェクトのリーダーをしています。メンバーは新人のBくんと、ベテラン3人です。Bくんはいつも使い走りをしていて、仕事のミーティングはAさんとベテラン3人ですませることが多かったそうです。
4つの公平性の尺度のうち、最も簡単に改善できるのが「情報的な公平」です。人事トレーナーはAさんに次のようなことを提案しました。
「仕事のミーティングはこれまで通りです。ただし、新人のBくんが帰ってきた後で、同じ時間をかけて、同じ内容を、1対1で説明するようにしましょう。」
わざわざ同じ時間をかけて…と、気乗りしないAさんでしたが、実際にやってみると、新人のBくんが喜んだのはもちろんのこと、意外な効果が表れました。
ベテラン社員の3人も「マネジメントは全然ダメな上司だと思っていたが、どうやらBくんの面倒をちゃんと見ているようだ」と、Aさんを見る目が変わってきたのです。公平な上司を印象づける作戦が見事に成功した事例です。
■ 「三つ子の魂百まで」の新人教育
「三つ子の魂百まで」ではありませんが、新人のうちに抱いた会社のイメージは、その後もずっと維持されることがわかっています。
例えば、入社式での説明などに「公平」というキーワードを散りばめておくと、「この会社は公平だ」(公平にとても気を使っている)というイメージを抱き、その後もずっと「うちの会社は公平だ」と感じてくれるというわけです。
また、新人のうちの経験は、その後のメンタルヘルスや離職率など、社員のモチベーションに大きな影響を与えることも知られています。
新入社員研修や、その後のOJT、メンタリングなどは「組織公平性」を意識して行うと効果的です。上司やメンターが、公平性について理解しており、手続きのや情報の公平性を態度で示すことが大切です。
■ ウチの会社は公平な組織か
当社の社員は「組織公平性」をどのように感じているのでしょうか。昨年度の社内調査のレビューを見てみましょう。
この部分は割愛。写真をお楽しみください。
マネジャーの行動を評価する上で、組織公平性は最も重要な軸のひとつです。多面評価などを行っている場合は、組織公平性を意識しながら結果を読んでみると、新たな発見があるかも知れません。
参考
ELECTRIC DOC. – 給与で社員のモチベーションは上がらない!?
この記事は、私が専属産業医をしている企業内で配信しているメールマガジンの内容を、ウェブ用に書き直したものです。