社員との面談の中で、よく尿酸についての質問を受けます。尿酸値が高いがどうすればいいのか。尿酸値が高いとどうなるのか。ビールをあまり飲んでいないのにどうして高いのか。今回はそんな疑問にまるごとお答えします。
尿酸 → 痛風 → 恐ろしい合併症
尿酸値の基準値は7mg/dl以下です。濃度が7mg/dlを超えると、血液中に溶けきれなくなった尿酸が結晶化してくるからです。結晶化した尿酸は数年かけて関節や内臓にたまっていきます。
そして、ある日突然、足親指の付け根の関節が赤く腫れて痛みだします。これを痛風(発作)といいます。その痛み方といったら、万力で締め付けられたように激烈で、大の大人が涙をこらえるほどです。激しい痛風発作も、適切な治療をうければ1週間ほどでよくなります。いつの間にか笑い話となり、まるで武勇伝のように語られることもあります。
しかし、高尿酸血症の本当の恐ろしさは、別のところにあります。はなばなしい痛風発作のかげでは、腎障害や動脈硬化、腎結石などの合併症がひそかに進行しているのです。腎不全、心筋梗塞、脳血管障害などの生命を脅かす合併症の原因となります。
高尿酸血症を予防するポイント
尿酸はプリン体という物質から作られます。高尿酸血症を防ぐためには、プリン体を多く含む食べ物や、プリン体の生成を増やす食べ物の摂取を控えることが大事です。
【プリン体を多く含む食べ物】 プリン体は動物の細胞の中にある物質で、特に肉や内臓に多く含まれます。たとえば魚の内臓を取り除くだけでもプリン体の摂取量はかなり違ってきます。プリン体は水に溶けるため、肉や魚の煮汁やラーメンのスープなどにも多く含まれます。
【プリン体の生成を増やす食べ物】 果物や砂糖に含まれる果糖は、体内でのプリン体の生成を増やすため、尿酸値を上げる原因となります。
【お酒は適量に】 アルコール類は体内でのプリン体の生成量を増やします。ビール自体にも麦芽由来のプリン体が多く含まれています。1日の摂取量は、ビールなら小びん1本程度、日本酒なら1合弱、ウイスキーならシングル2杯程度、ワインなら200mlが目安です。
【水分をたくさんとる】 水分をたくさん飲んで尿量を多くすると、尿酸の排泄がよくなり、腎結石の予防にもなります。水やお茶を1日に2リットル程度が目安です。
【野菜をバランスよくとる】 肉類に偏った食事よりも、野菜をたくさん食べるようにしましょう。
【肥満を解消する】 プリン体は多くの食品に含まれるので、これを食べてはダメ、あれもダメと考えると、食べられるものが無くなってしまいます。バランスのよい食事をほどほどに食べて体重をコントロールすることが、尿酸値を下げる最良の方法です。
この記事は、私が専属産業医として勤務している会社で、全社員に向けて毎週配信しているメールマガジンの内容を、ウェブ用に書き直したものです。