「結核は過去の病気だ」という印象がありますが、実は現在でも、病院内や学校、職場などで患者が発生しています。感染性の結核が発生した場合は「感染症法」に従って、保健所の指導のもと、接触者のリストアップや接触者健診などを行います。
職場での結核対応の最大のポイントは「従業員の不安や動揺を抑える」ことです。職場で結核の患者が発生したという連絡をうけたら、関連する従業員をすみやかに集め、結核についての正しい知識と今後の対応について、産業医や保健師が現場に出向いて説明すると良いでしょう。
接触者のリストアップや接触者検診の時期や内容、準備などについては、管轄の保健所に問い合わせて確認しましょう。
従業員向けの説明資料
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肺結核とはどんな病気ですか。
肺結核は呼吸とともに吸い込んだ結核菌が肺で増殖することで起こる感染症です。発病すると、全身倦怠感や微熱、せきや体重減少などの症状を起こします。血液検査・痰の検査・ツベルクリン検査・レントゲン検査などで診断します。肺結核にかかり、さらに排菌がある場合には、他の人に感染することがあります。
病院で「結核の疑いがある」「結核にかかっている」と言われました。どうしたらいいですか。
上司を通じて職場の健康管理の担当者、もしくは人事担当者に連絡してください。培養検査などで、感染性がないことが確定するまでは出社は控えて下さい。
感染性がある場合(排菌がある場合)は入院して治療を行います。適切な治療を続け、症状や排菌がなくなったことが確認されるまで出社はできません。
また、出社が認められた場合も、結核の治療中は時間外労働の制限などが必要となるため、主治医や健康管理部門と相談してください。
職場で結核の患者が出ました。これからどうなるのですか。
その患者に感染性があるかどうかで対応が異なります。感染性があると確認された場合は、感染のひろがりを防ぐために、事業所がある地域を管轄する保健所の指導のもと、次のような手順で接触者健診が行われます。
- 感染性(排菌)の有無を確認。感染性がない場合はここで対応は終了。
- 感染性がある場合は、接触者をリストアップ(乳幼児や基礎疾患のあるハイリスク者、濃厚接触者、通常接触者)。
- 感染力の強さに応じて健診の対象者を定め、2ヶ月以降に接触者健診を実施(血液検査またはツベルクリン反応検査)。
- 健診の結果、感染の疑いがある場合は、半年ごとに胸部レントゲン検査を行い2年間追跡する。発病しないよう予防内服を行うことも。
職場で結核の患者が出ました。どうすれば結核がうつるのを予防できますか。
結核に感染してもほとんどの人は発病しません。免疫力が低下していると発病しやすいので、規則正しい生活をすることが大切です。糖尿病がある人は主治医に相談して、血糖値をしっかりコントロールしてください。
結核の「感染」と「発病」は違うのですか。
感染とは結核菌が体の中に入り込んだ状態です。結核菌に接触しても必ず感染するわけではありません。感染したかどうかは血液検査やツベルクリン検査でわかります。
もし感染していても、ほとんどは発病しません。発病を防ぐためには、規則正しい生活を送るようにします。そのため残業制限や出張制限を行います。発病を予防するために、薬を飲んで治療を行うことがあります。
発病した場合は、全身倦怠感、微熱、せき、体重減少などの症状が出ます。このような症状が2週間以上続いた場合は必ず病院を受診して下さい。
職場で結核の患者が出ました。私から家族にうつることはないでしょうか。
感染性があるのは、結核を発病し、さらに排菌がある人だけです。結核患者に接触しただけ、あるいは結核菌に感染しただけでは、あなたから他の人にうつることはありません。
接触者健診を行うのは2ヶ月後だそうです。その間、何もしなくて大丈夫ですか。
感染しているかどうかは、2ヶ月たたないと、検査をしてもわかりません。そのため接触者健診は2ヶ月以降に行います。万が一、あなたが現在、結核菌に感染しているとしても、それだけで家族にうつることはありません。
職場で結核の患者が出ましたが「感染性がないので健康診断はしない」そうです。同じ部屋で仕事をして大丈夫でしょうか。
結核を発病していても、患者の唾液や痰にまじって結核菌が空気中に出ない限り、他の人にうつることはありません。感染性がないと診断された場合には、出社も可能ですし、接触者健診も行いません。
参考資料
改定履歴
- 初稿:2008年4月5日
- 第2稿:2009年1月8日 手引きの改訂をうけて書き直し
- 第3稿:2015年7月21日 手引きの改訂をうけてリンク先を変更
- 第4稿:2018年07月25日 従業員向けの説明資料(PDFファイル)を作成
- 第5稿:結核の接触者健康診断の手引き 2022年3月 改定6版の内容を確認