2. 産業医面談がうまく機能しない原因と解決策

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職場の健康管理において、産業医面談はとても重要な役割を果たします。この仕組みがうまく機能しないと、従業員の健康状態の悪化や、職場の生産性低下などの大きな問題を引き起こす可能性があります。この記事では、産業医面談がうまく機能しない原因とその解決策について解説します。

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ケーススタディ:産業医面談への相談を先送りしていた事例

ある職場での事例です。

Bさんは長時間の残業が続き、最近、調子がよくありません。その様子に上司も気づいていましたが、「今は繁忙期でみんな疲れているし、忙しい時期が過ぎればBさんも元気になるだろう」と判断し、産業医への相談を先延ばしにしていました。そして2ヶ月後、何とか仕事の山場は超えましたが、その後もBさんの体調は回復せず、数日間会社を休んだ後、突然「休職を要する」という診断書を上司に提出する事態となりました。上司はあわてて産業医に相談しましたが、もっと早めに対応していれば、休職を防げたかもしれないと、後悔する結果となりました。

このように、適切なタイミングで産業医面談を実施できないと、従業員と職場の両方に大きな影響を及ぼしてしまいます。


産業医面談が機能しない主な原因

産業医面談は、社員の健康管理の基本的な仕組みであり、以下のステップで進んでいきます。

社員の健康管理の基本的な仕組み
  1. 産業医面談を行う
  2. 必要に応じて産業医が意見書を発行する
  3. 意見書をもとに職場で対応を検討・実施する
  4. 配慮が必要な間は1~3の対応を繰り返してフォローアップする

このステップのどこかに問題が発生すると、仕組み全体がうまく機能しなくなります。問題が生じる原因をひとつずつ見ていきましょう。

1. 産業医に情報が届かず面談が実施されない

冒頭のBさんのケースでは、産業医に情報が届かなかったことが問題の本質です。以下のような状況があると、こうした問題がおこりがちになります。

  • 従業員や上司が相談をためらう
    プライバシーの懸念や、「面談後に仕事を休まされるのではないか」という不安から、相談をためらうケースがあります。
  • 上司が相談のタイミングを逃す
    「しばらく様子を見よう」と考えている間に、問題が悪化するケースも少なくありません。
  • 相談方法の周知不足
    産業医の役割や相談方法を従業員や管理職が十分に理解していない場合があります。

2. 産業医の意見が共有されない

産業医面談を行なっても、必要な産業医の意見が人事や現場に十分伝わらない場合があります。特に、次のような場合に問題が起きることがあります。

  • 不明確な意見
    産業医の意見の内容が具体性に欠けると、職場での対応が進みにくくなります。
  • 伝達方法が適切でない
    産業医の意見が口頭やメールだけで伝えられた場合、対応の必要性が認識されにくいことがあります。
  • 意見の理解不足
    人事担当者や管理職が産業医の意見を正しく解釈できない場合、対応が不十分になったり、後回しになったりすることがあります。

3. 適切な措置が実施されていない

会社が産業医の意見を受け取りながらも、必要な対応を職場で実行に移せていない場合もあります。その背景には以下の問題が考えられます。

  • 現場の実情に合わない
    就業制限や業務調整の内容が現場の状況と合わない場合、対応が先送りされることがあります。
  • 自己判断での運用
    社員や上司の判断で、必要な措置が十分に実施されなくなることがあります。
  • 管理職の労務管理の不足
    管理職が部下の状況を適切に管理できていない場合、必要な措置が適切に実施されていないことがあります。
  • 現場の状況が産業医にフィードバックされない
    職場での対応状況が産業医に情報共有されていない場合、必要な対応が遅れることがあります。

4. フォローアップ不足

従業員の健康問題が続いている間は、産業医面談によるフォローアップを継続します。フォローアップが不足していると、健康状態の悪化に対応が遅れるだけでなく、健康が回復したあとも、不要な制限が解除されない場合があります。


解決策:産業医面談を効果的に機能させるために

こうした問題を解決し、産業医面談を効果的に機能させるためには、次のような対策が有効です。

1. 情報共有を円滑にする仕組みの構築

  • 相談窓口の整備:相談方法やプライバシー保護の仕組みを明示し、気軽に相談できる環境を整えます。
  • 定期的な人事担当者とのミーティング:人事担当者と産業医と定期的に連携し、問題の早期発見を目指します。

2. 産業医の意見書の文書化

  • 正式な意見書として発行:産業医の意見は、口頭やメールで伝達するだけでなく、正式な「意見書」として書類を発行します。意見書には、職場で必要な対応やその理由を具体的に記載します。
  • 情報伝達の手順の明確化:意見書が適切に現場に伝わるよう、誰が、どのように現場に伝えるのか、情報共有の担当者や手順を明確に決めておきます。

3. 現場との調整を強化する

  • 現実的な対応策の検討:職場の状況にみあった現実的な就業上の措置を提案することが重要です。必要に応じて、職場の上司とも事前に相談するとよいでしょう。
  • 上司との対話の場を設ける:産業医面談の後の職場の状況や、本人の様子などをフォローアップするために、職場の上司と連携し、情報収集を行います。

4. 定期的なフォローアップ

  • 定期的な産業医面談:健康状態を確認し、必要な対策を見直すために、産業医面談を定期的に実施します。
  • 就業上の措置の実施状況の確認:管理職や人事から、従業員の健康状態や就業上の措置の実施状況について、定期的に情報を入手し、産業医が適切な対応を継続できるようにします。
  • 定期的な状況の棚卸し:就業制限がある社員やフォローアップが必要な社員のリストを作り、年に1~2回見直しましょう。必要に応じて産業医面談を計画し、就業制限の見直しを行います。

まとめ

産業医面談がうまく機能しない原因には、相談窓口の周知不足や情報共有の問題、フォローアップの不足などがあります。これらの課題に適切な対策を講じれば、社内の仕組みを効果的に運用し、社員の健康管理を適切に進めることができます。

まずは、自社の産業医面談の仕組みを見直し、情報共有やフォローアップ体制の強化から始めてみましょう。

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