レントゲンなどで用いられているX線は、いろいろな実験や分析にも用いられており、研究所や工場にはX線を発生する分析装置が設置されていることがあります。職場におけるX線の取り扱いは「電離放射線障害防止規則」や「労働安全衛生規則」などの法律に定められており、その中に「放射線管理区域」というものがあります。
放射線管理区域とは、X線などによる被ばく量が、3ヶ月間で1.3ミリシーベルトを超える恐れがある場所のことで、管理区域内でX線を取り扱う従業員には、被ばく量を測定するガラスバッジをつけさせたり、健康診断を行ったりと、さまざまな取り組みが必要となります。
しかし、X線を用いた分析機器の中には「装置の外部にはX線が漏れないような構造になっており、作業者にX線が当たることがないもの」ものがあります。この場合には、装置の中側だけが放射線管理区域となり、装置の外側(つまり実験室内)は放射線管理区域にはならないことが、厚生労働省の通達に記されています(下記参照)。
つまり、そこで作業を行う従業員の健康診断や、ガラスバッジなどによる被ばく量の測定は不要になります。ただし、装置の内部は「放射線管理区域」であるため、標識による表示や安全教育などは必要です。
このことは、実際にX線を用いる研究を行う人の中ではよく知られていることらしいのですが、事業場の安全管理や健康管理を行う人の中には、まだ知られていないこともあるようです。実は私も、職場巡視のときに、案内していただいた現場の方から教えていただきました。
労働安全衛生規則及び電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令の施行等について、厚生労働省労働基準局長 基発第253号、平成13年3月30日
第3 細部事項
3 第3条関係
(6) 放射線の照射中に労働者の身体の全部又は一部がその内部に入ることのないように遮へいされた構造の放射線装置等を使用する場合であって、放射線装置等の外側のいずれの箇所においても、実効線量が3月間につき1.3ミリシーベルトを超えないものについては、当該装置の外側には管理区域が存在しないものとして取り扱って差し支えないこと。ただし、その場合であっても、装置の内部には管理区域が存在するので、第1項の「標識によって明示」することは必要であること。この装置の例としては、次のものがあるが、これらの装置を使用する場合であっても、労働者に対しては、安全衛生教育等において、放射線の人体への影響、及び被ばくを防止するための装置の安全な取扱い等について周知させること。
ア エックス線照射ボックス付きエックス線装置であって、外側での実効線量が3月間につき1.3ミリシーベルトを超えないように遮へいされた照射ボックスの扉が閉じられた状態でなければエックス線が照射されないようなインターロックを有し、当該インターロックを労働者が容易に解除することができないような構造のもの
イ 空港の手荷物検査装置であって、手荷物の出入口は、労働者の手指等が装置内に入ることがないように2重の含鉛防護カーテンで仕切られ、当該装置の外側での実効線量が3月間につき1.3ミリシーベルトを超えないように遮へいされているもの
ウ 工場の製造工程で使用されている計測装置等で、製品等の出入口は、労働者の手指等が装置内に入ることがないように2重の含鉛防護カーテンで仕切られ、又は労働者の手指等が装置の内部に入った場合に放射線の照射が停止するインターロックを有し、かつ当該インターロックを労働者が容易に解除することができないような構造であり、装置の外側での実効線量が3月間につき1.3ミリシーベルトを超えないように遮へいされているもの