前回の記事「ストレスに負けない仕事術1 (ストレス・コーピング基礎編)」では、ストレス・コーピングについて説明しました。ストレッサーへの対処法のことをコーピングといいます。身の回りの「困っていること」への適切な対処法を考えてみましょう。今回はその実践編です。
(1) 問題をリストアップする
職場で「困っていること」「負担に思っていること」をできるだけ具体的にリストアップします(10個ほど)。いくつかの問題はそれぞれ独立しており、いくつかの問題はお互いに関係していることがわかります。書き出すことで問題点が具体的になり、対処する自信にもつながります。
(2) 問題の優先度を決める
それぞれの問題点に対して、以下の6つの項目について1~4点で点数をつけてみましょう。質問の答えが「Yes」の場合に高い点数をつけます。
合計点の高いものが優先度の高い問題点です。もっとも優先して対処するストレッサーを選びましょう。関連する問題点をひとつにまとめてもいいでしょう。
(3) 対処法をなるべく多く書き出す
優先して対処する問題点に対して、思いつく限りたくさんの対処法をリストアップします。方法のよしあしや、実行できるかどうかの判断は保留し、思いつくまま書き出します。自分自身の経験や、周囲の人の体験、前回の「コーピングの種類」などを参考にして下さい。
(4) 対処法の長所と短所を検討する
リストアップした対処方法の長所と短所を書き出します。どんな方法にも長所と短所があり、その両方を検討しておくことが大切です。例えば、問題から離れることも、直接の解決にはつながりませんが、考え方を変えたり気持ちを落ち着けたりするためには有効です。解決を見送っているうちに、問題が自然に解決することもあります。
(5) 対処方法を絞り込む
対処法のそれぞれの長所と短所を見極めた上で、どの方法がもっとも望ましいと思われるか考えてみます。対処法を絞り込むときには次のポイントを参考にして検討します。
ひとつの方法だけでなく、いくつかの方法を組み合わせてみることも重要です。
■ 問題の対処法を実行する
問題への対処方法を絞り込めたら、あとは実行に移すだけです。コーピングをスムーズに実行するためには、自信のある方法や、すぐに実行できることから始めるとうまくいきます。また、すでにその方法を実践しているひとがいれば、そのやり方を観察し、真似してみてもよいでしょう。
いきなり本番で試すのが難しいときは、イメージトレーニングやロールプレイなどで練習を重ねるとうまくいきます。自分の意思表示や、周囲とのコミュニケーションをスムーズに行うには、アサーションについての記事も参考にしてみてください。
■ 問題が解決しないときには……
問題がなかなか解決しないときは、できたことに目を向けて現状を再検討するか、周囲のアドバイスを求めるとよいでしょう。やる気が続かないときは、自分へのご褒美を設定したり、問題から一度離れてみたりするのが効果的です。あるいは、その問題には別の種類の対処法が有効かも知れません。失敗の原因をすべて自分のせいにするのではなく、コーピングの方法を見直すことも必要です。
■ 参考文献
「じょうずなストレス対処のためのトレーニングブック」(島津明人 著、法研)
この記事は、私が専属産業医をしている企業内で配信しているメールマガジンの内容を、ウェブ用に書き直したものです。