部下の健康管理のポイントは「いつもと違う様子に気づき、声をかけて話をきき、社内窓口につなぐ」ことです。今回は「声のかけ方」の例を見てみましょう。
近頃、部下の山田さんの様子が気がかりです。口数が減り、いつもの元気が感じられません。表情も堅く、業務の報告も滞りがちです。先週は珍しく遅刻が続きました。そんな山田さんに思い切って声をかけてみましたが……。
課長「最近、元気がないけど大丈夫?」
山田「はい、大丈夫です……」
課長「悩み事でもあるの?」
山田「いえ、別に……」
課長「仕事が進んでないようだけど」
山田「……すみません」
課長「ちゃんと眠れてるの?」
山田「いえ……」
課長「じゃあ、病院に行ったら?」
山田「いえ、とんでもない。大丈夫です……」
課長「そう。無理しないでがんばってね」
大丈夫です、と言う山田さんの様子は、あまり大丈夫そうではありません。困った課長は、産業医に対応のアドバイスを求めました。
産業医からのアドバイス
①反論したり遮ったりせず、傾聴を。
②体の症状のつらさを受け止めて。
③産業医面談をはっきりと指示する。
次の週、課長は山田さんに再び声をかけてみました。
課長「最近、以前と比べて、元気がない様子が続いているね。私も心配なんだ。体調や仕事で、変わった事があれば話してくれないか」
山田「実は、体調が少し悪くて……」
課長「体調が悪いって、具体的にはどんな感じなの?」
山田「よく眠れないんです……」
課長「そう。よく眠れないんだ」
山田「ええ、なかなか寝付けないんです。なのに明け方、3〜4時には目が覚めてしまうんです」
課長「そう。明け方も早く目が覚めるの。寝不足が続くと、体がつらいよねえ」
山田「はい。朝、体が重くて、なかなか動けないんです。でも、仕事しなくちゃって、なんとか出社するんです」
課長「そう。寝不足で体がつらいのに、仕事しなくちゃと思って、無理をして出社しているんだね。しんどいのに、がんばっていたんだねえ」
山田「はい……。申し訳ありません……」
課長「寝不足がこれ以上続くとつらいでしょう。どうかな。医者に診てもらっては?」
山田「いえ……そこまでは……」
課長「無理強いはしないけど、山田さんのこと、僕も心配しているんだよ」
山田「はあ」
課長「まずは産業医の先生に相談してみようよ」
山田「でも……」
課長「部下の健康管理は、私の大切な仕事なんだよ。それに産業医面談の内容は、プライバシーが守られるから、安心して」
山田「わかりました。そうしてみます」
課長「よかった。私から連絡しておくよ。何かあれば、いつでも相談にのるからね」
山田「ありがとうございます」
「部下の仕事ぶりや様子が気になる、どう接すればよいかアドバイスが欲しい」 そんな時は産業医や、会社で契約しているEAP機関など、社内外の専門家に相談してみましょう。上司が適切なタイミングで介入することで、メンタルヘルス不調につながる「ちょっとしたストレス」「ちょっとした仕事の悩み」の早期解消につながります。