4. 産業医の意見を活かす方法:現場や人事との連携

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産業医の意見が職場の対応に活用されないと、社員の健康問題が悪化し、職場全体の生産性低下や、法的なトラブルにつながる可能性があります。本記事では、産業医の意見を職場で活用するための具体的な方法と、その重要性について解説します。

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よくある失敗事例:産業医の意見が現場で活用されなかった事例

Aさんは、長時間労働が続いた影響で体調を崩し、産業医面談を受けることになりました。面談の結果、産業医は、Aさんの健康回復のために「残業を月10時間以内に制限する」という意見書を発行しました。しかし、現場の多忙な状況を理由に、残業制限が十分に守られず、Aさんの健康状態はさらに悪化し、最終的に長期休業を余儀なくされてしまいました。

こうした事例を経験したことはありませんか? 産業医の意見を適切に理解し、現場で必要な措置を実行する体制が整っていないと、職場の健康問題の深刻化を招く原因となります。


産業医の意見が就業上の措置に反映されない理由

社員の健康管理を守るためには、産業医の意見を参考に、必要な措置を確実に実施することが重要です。

社員の健康管理の基本的な仕組み

しかし、以下のような場合に、産業医の意見に基づく措置が適切に実施されないことがあり、社員の健康状態の悪化など、重大な問題を引き起こしかねません。

  1. 現場の理解不足
    産業医の提案の必要性が、現場の上司に十分に理解されず、「業務が忙しい」などの理由で対応が後回しになるケースがあります。
  2. 就業制限が徹底されない
    現場の繁忙期などを理由に、産業医が提案した残業時間の制限や業務負担の調整が徹底されず、社員が制限以上の業務を行うことがあります。
  3. 情報が正確に伝わらない
    人事担当者が意見書の内容を正確に現場に共有しなかったり、情報伝達の過程で内容があいまいになってしまうと、現場で適切な対応が取れないことがあります。
  4. 産業医の意見が職場の実情に合わない
    産業医が現場の状況を十分に理解していないと、提案した措置が現場の実情に合わず、実行が難しいことがあります。その結果、現場が独自の判断で対応を変更したり、実施を見送るケースも見られます。
  5. 社員本人が制限を守れない
    産業医の意見を受けて、就業制限を行うために上司が業務調整を行なっても、社員自身が就業制限の必要性を十分に認識せず、結果として、就業制限を超えて仕事をしてしまう場合もあります。
  6. 会社としての判断
    労働安全衛生法では、会社は産業医の意見に必ず従う義務はありません。会社は産業医の意見のほか、主治医の診断や社員本人、上司の意向、業務の必要性なども総合的に考慮して最終的な対応を決定します。ただし、産業医の意見と異なる対応をとる場合には、その理由や背景を産業医に説明する責任があります。

産業医の意見を現場で活かすための具体策

産業医の意見を職場でしっかり生かすためには、情報を正しく共有し、現場で実行できる内容にすることが大切です。以下の取り組みを行うことで、産業医の意見を効果的に活用できます。

  1. 意見書の文書化
    口頭の伝達だけでは誤解が生じやすいため、産業医の意見は、正式な「意見書」として文書化し、人事担当者や現場の上司に共有します。意見書には、具体的な措置の内容や、措置が必要な背景を明確に記載します。また、必要に応じて産業医が、人事担当者や現場の上司に直接説明し、誤解を防ぎます。
  2. 現場の状況に即した提案
    意見書の作成前に、産業医が職場の状況を上司や人事担当者に確認し、実行可能な内容を提案します。現実的な措置を提案することで、確実に実施できるようになります。
  3. 正確な情報伝達
    意見書を受け取った担当者が、内容を現場の上司やチームに正確に伝えることが重要です。誰が、どのように伝達するのか、事前に手順を明確に定めておきます。
  4. 定期的な進捗確認の仕組み
    定期的に産業医と人事担当者が集まって打ち合わせを行い、意見書の内容が職場で適切に実行されているか、進捗状況を確認します。職場の状況や課題を共有し、必要に応じて対応を調整します。
  5. 継続的なフォローアップ面談
    産業医が社員と定期的に面談を行い、健康状態や職場の状況を把握し、就業上の措置が適切に実施されているかを確認します。必要に応じて意見書を更新し、就業上の措置を適切に見直します。

まとめ:産業医の意見を活かすために

産業医の意見をもとに職場で必要な措置を実施することは、社員の健康を守るための欠かせないステップです。そのためには、産業医、人事担当者、現場の上司が連携し、必要な措置を正しく理解し、実行に移すための仕組みが重要です。

意見書を文書化し、現場の実情に合った提案を行うことはもちろん、定期的なフォローアップを通じて柔軟に対応状況を見直します。こうした取り組みを通じて、産業医の意見が職場で活用される体制を整えましょう。

みなさんの職場でも、こうした仕組みがうまく運用されているか、今一度、社内の状況を見直してみてはいかがでしょうか。

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