3. 産業医面談が機能しない理由と解決策を徹底解説(相談の申し込み、意見書の伝達)

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産業医面談のプロセスが滞ると、職場でどんな問題が起きるでしょうか。

ある社員が長時間労働の末に体調不良を訴え、欠勤が続くようになりました。上司は対応に苦慮しながら業務量を調整しましたが、体調は改善せず、最終的に社員は長期休職に至ってしまいました。こうした事態は、産業医面談の仕組みが適切に機能していれば、防げたかもしれません。

社員の健康管理の基本的な仕組み

産業医面談は、社員の健康を守り、職場環境を維持するための重要な仕組みです。面談結果に基づく意見書の発行やフォローアップを通じて、健康問題を未然に防ぐことが可能です。しかし、このプロセスのどこかで問題が発生すると、効果的な対応ができなくなります。本記事では、産業医面談がうまく機能しない原因とその対策について説明します。

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産業医に情報が届かず、面談に至らない場面

社員が体調不良を抱えていても、その情報が産業医に届かず、面談が実施されないために、対応が遅れることがあります。この段階で対応が滞ると、社員の健康問題が深刻化するリスクが高まります。

よくある原因

  1. プライバシーへの懸念
    相談内容が上司や人事担当者に伝わるのではないかという不安。
  2. 相談への抵抗感
    職場内で健康に関する話題を避ける風潮があり、体調について相談することに迷いやためらいがある。
  3. 情報不足
    社員が産業医の存在や役割、相談方法を知らない。
  4. 相談に対する誤解
    「相談すると休職を強制される」「病院を受診させられる」などの誤解が相談をためらわせる。
  5. 管理職のためらいや不安
    管理職が部下の体調不良の相談対応について、産業医にいつ、どのように相談すべきかわからない。また、相談による業務への影響を懸念してためらってしまう。

具体例:相談の遅れが招いた事態

ある社員が頭痛やめまいを訴え、上司に相談していましたが、上司は「一時的なものだろう」と考えていました。上司は産業医への相談を提案しましたが、社員は「相談すると休職させられるかもしれない」とためらっており、その意向を考慮した上司は、仕事の負担を軽減して様子を見ることにしました。しかし、結果的に長期休業に至ってしまいました。このケースでは、産業医に早めに相談していれば、適切な業務調整や受診などで回復を早められた可能性があります。

対策:早期の相談を促すための取り組み

社員や上司が早い段階で産業医に報告できるようにするには、次のような取り組みが有効です:

  1. 相談窓口の利用方法や産業医の役割を明確にする
    産業医の役割や相談窓口の利用方法を社員に周知し、定期的に情報を発信する。
  2. プライバシー保護を徹底する
    「本人の同意なしに相談内容を第三者に伝えない」方針を明確にし、不安を解消する。
  3. 社員が相談しやすい環境を整える
    メールやオンラインツールを用いた相談を可能にし、相談のハードルを下げる。
  4. 顔の見える産業医活動を行う
    産業医が社員や管理職向けに研修を実施するほか、定期的に情報発信をすることで、社員にとって身近な存在となる。
  5. 管理職への教育を徹底する
    管理職向けに、部下の体調不良に早期に対応する重要性や、産業医に相談する手順についての研修を、繰り返し実施します。

このような取り組みを実施することで、社員や上司が産業医に相談しやすい環境を作り、産業医が適切なタイミングで関与できるようになります。


産業医の意見が現場に届いていない場合

産業医面談が実施されたにもかかわらず、その結果や意見が職場や関係者に適切に伝わらない場合、職場での対応が滞り、健康問題が悪化するリスクがあります。

よくある原因

  1. 情報伝達のあいまいさ
    面談の結果や職場での対応について、口頭の説明や簡単なメモ、メールだけでは十分に意図が伝わらず、受け手が重要性を理解しきれないことがあり、対応が抜け落ちたり、後回しになってしまうことがあります。
  2. 情報が途中で途切れる
    産業医から人事部、人事部から現場の上司に情報が伝達される過程で、内容が抜け落ちたり、誤解されたりするケースがあります。
  3. フォロー体制の不足
    産業医の意見をもとにした対応が実際に行われたかどうかを、確認する仕組みがない場合、産業医の意見が形骸化するリスクがあります。

具体例:産業医の意見がうまく伝達されなかったケース

ある企業で、産業医が社員に「就業制限が必要」と判断しました。しかし、人事担当者に口頭で「残業時間を制限した方がよい」と簡単に伝えただけで、正式な「産業医の意見書」を発行しませんでした。その結果、人事担当者が情報を共有し忘れ、現場では就業制限が実施されないまま社員が通常勤務を継続。その後、社員の体調はさらに悪化し、長期療養が必要な事態に発展しました。このケースは、意見書を文書で発行し、関係者全員に共有する仕組みがあれば防げた可能性があります。

対策:産業医の意見を確実に伝達するための取り組み

産業医の意見が確実に伝達され、就業上の措置が実行されるようにするには、以下のような取り組みが重要です:

  1. 意見書を必ず文書で発行する
    就業上の措置に関する意見は、正式な「意見書」の形式で発行する。
  2. 口頭での補足説明を行う
    意見書の内容を人事担当者や上司など関係者が理解できるよう、口頭での補足説明を行う。
  3. 定期的なミーティングを実施する
    産業医、人事担当者が集まり、対応状況を確認する定期的なミーティングを設ける。
  4. フォローアップ体制を強化する
    産業医の意見が現場に反映され、適切に対応されているかを定期的に確認する仕組みを整備する。

まとめ

産業医面談が適切に機能しないと、社員の健康問題が長期化し、職場全体の業務効率や士気にも悪影響を及ぼします。こうした問題を防ぐためには、情報共有プロセスを見直し、産業医、人事担当者、現場の上司がスムーズに連携できる仕組みを整えることが不可欠です。

まずは、自社の情報共有プロセスを見直し、改善に向けた一歩を踏み出してみませんか?

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