どうする?職場の問題行動:マイペースで協調性がない社員(前編)

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空気が読めない、こだわりが強い、人の意見をなかなか聞かないなど「マイペースで協調性がない」とされる言動は、業務の進捗(しんちょく)の遅れや対人関係の問題を招く。

協調性がない・こだわりが強い・空気が読めない

今回は「マイペースで協調性がない」社員の行動によって起こる問題を解説する。すなわち、空気が読めない、こだわりが強い、人の話や意見を聞き入れない、人の気持ちが分からないといった行動のことである。こうした行動によって、職場ではどんな問題が生じるだろうか。

周囲とペースの合わないDさんの事例

とあるメーカーに勤務するDさんは40代の男性社員だ。業務の経験は長く、頼まれた仕事には真面目に取り組むタイプだが、こだわりが強く、協調性に難ありと評価されている。

Dさんに仕事を依頼すると、細かい点や本筋でない部分にこだわってしまい、ささいなことが納得できずに作業が止まってしまう。何か疑問が浮かんだり、引っかかる部分があると、自分が納得するまでいろいろ調べたり考えたりしてしまい、作業が停滞する。

例えば「この書類のこの部分の記載内容は、手順書と一致していないのではないか」と気になってしまうと、過去の資料などを気が済むまで調べ始める。しかし、解決方法がなかなか見つからず、そこから作業が進められなくなる。「先方からこのように言われているが、どうすればよいだろう」と悩み、ひとりでずっと考え込んでいることもある。ただ、本人が悩んでいる部分は、業務上はそれほど重要ではなく、無視して作業を進めても問題がなかったり、さっさと対応して次に進んだ方がよかったりする。周囲から見ると「なぜ、そこに引っかかるの?」「上司や先方にすぐ確認すればいいのに」と思うような部分に時間をかけていることが多い。

さらに、本人が悩んでいる部分について、上司や周囲のメンバーが「こう作業を進めるといいよ」と助言したり、「今回はこう処理をしておいて」と指示をしたりしても、その内容に納得できなかったり、自分の考えと違っていたりすると、またいろいろと気になり始めてしまうのだ。「でも、前はこうだったし……」と悩んでしまったり、「本当にそれでいいんですか?」などと食い下がったりして、その後も細かすぎる確認や見当違いの質問が続く。また、Dさんは、自分が関心があるところばかりを深堀りする傾向もあって、指示とは別の方向に作業を進めてしまうこともある。

また、仕事の進捗をたずねられたときには、たいてい「大丈夫です」「問題ないです」などと答えるのだが、それをうのみにしてしまうと大変なことになる。締め切り直前になって、実際にはほとんど仕事が進んでいないことや、大幅な修正が必要だということが判明するのだ。一緒に仕事をするメンバーは、Dさんの仕事の遅れをカバーするために負担が増え、大変な思いをしている。

もうひとつ困ってるのが、空気を読めない発言をするために、周りの人の気分を害してしまうことだ。例えば「○○さんは、分かってないよね」とか、「○○部がちゃんとしていないからだ」「○○の担当者は仕事のレベルが低い」などと、業務に関するネガティブなコメントをよく口にする。本人は悪気はなく、思ったままのことを発言しているようだが、失礼なことや相手が嫌がることを面と向かって言ったりするので、それを聞かされる方はたまったものではない。

さらにDさんは、話が非常に長いことでも有名だ。こちらが忙しそうにしているときにも、気にせず話しかけてきたり、別の人と話しているところに急に割り込んできたりしては、自分の興味があることを延々と話すクセがある。「いいかげん、話をやめてくれないかな」とか「そろそろ席に戻ってくれないかな」と思っていても、察してくれる気配はない。そんな調子で、毎日、誰かがDさんの長話につかまっている。

Dさんは、決して悪い人ではない。ちょっと会って話をするくらいだと、物腰が柔らかく丁寧な人に見える。しかし、仕事で関わると個性が強く、「Dさんとはもう組みたくない」と訴えてくる人が後を絶たない。任せられる仕事も、だんだん限られてきている。

場面・行動・困りごとの3点を整理する

こだわりが強く、仕事の進め方や周囲とのコミュニケーションに独特のクセがあるDさんの行動によって、この職場ではいろいろな問題が起きているようだ。こうした問題を解決するためには、Dさんの「性格」ではなく、Dさんの「行動」に着目するとよい。どんな場面で、どんな行動をとり、その結果、周囲にどんな影響を与えているかが分かれば、解決のヒントが見えてくる。いくつかの問題について「場面、行動、困りごと」の3点で状況を整理してみよう。

(1) 作業指示を理解するのに時間がかかる、そのとおりに作業できない

  • 場面:本人が引っ掛かっている部分の作業について、上司や周囲のメンバーから「ここはこう進めておいて」と指示を出したとき。
  • 行動:Dさんは「うーん」といって、なかなか腑に落ちない様子で、本人が納得できるまで何度も質問を繰り返す。とりあえず「分かりました」とは言うが、実際にはその通りに作業を進められず、考え込んでしまうこともある。
  • 困りごと:本人が作業手順を理解するまで、周囲のメンバーの時間を多く取られる。指示のとおりに作業が進んでおらず、進捗が遅れたり、大幅な修正が必要になったりする。

(2) 作業の進捗を聞かれると、つい「大丈夫です」と答える

  • 場面:上司や周囲のメンバーが仕事の進捗を尋ねたとき。
  • 行動:実際には、本人が何か引っかかりを感じて、いろいろ調べていてもどうすればよいか分からない。そのために作業を進められなくなっているのだが、「大丈夫です」「順調です」と答える。
  • 困りごと:実際は作業が遅れていたり、本来の指示とは別の方向に作業を進めていたりする。締切直前になってそれが判明し、結局、他の人が肩代わりすることになって、その人の負担が増える。

(3) 相手の気分を害するような発言をする

  • 場面:会議、打ち合わせ、雑談などの場面
  • 行動:Dさんは、相手の事情や、聞き手の気持ちにかかわらず、自分が思っているまま批判的な発言をする。聞いている人が困惑した表情を浮かべたり、フォローしたりしようとしても、それに構わずどんどん話し続ける。
  • 困りごと:どう反応してよいか分からず、周囲は困惑する。批判的な発言を聞き続けることで嫌な気持ちになる。

(4) 話が長く、そろそろ切り上げたいのに話し続ける

  • 場面:仕事中にDさんと話をしている場面。
  • 行動:Dさんは自分の関心のあることばかり一方的に話をする。相手が、そろそろ切り上げたいとか、そろそろ席に戻って欲しいと思っていても、それに気付かない様子で話を続ける。
  • 困りごと:「そろそろ話をやめてください」と直接的に伝えるのは失礼だと思い、何とか察してくれないかと考えているが、Dさんは話をやめないので、だんだんイライラしてしまう。仕事の時間を奪われてしまう。

今回のまとめ

今回は、周囲のペースに合わせられないDさんの行動によって、同僚が困惑している事例を紹介した。後編では、こうした問題への対処のヒントを解説する。

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(この記事は中災防が発行する雑誌『安全と健康』2021年1月号〜12月号に連載した記事を元に、一部加筆したものです。)