どうする?職場の問題行動:陰で不平不満を言い、上司の指示に素直に従わない社員(後編)

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職場で見られる「困った行動」への対策を解説する連載の最終回。前回に続き「直接は意見を述べず、陰で不平不満ばかり言って、上司の指示に素直に従わない行動」への対処法を説明する。職場での困った行動に対処するには、本人の行動パターンを理解した上で、行動のきっかけとなる場面を減らす対策や、周囲への影響を最小限に抑えるための対策を考えよう。

前回の事例まとめ

まず前回の事例を振り返ってみよう。ある会社の事務部門で働くFさんは、会議などで意見を求められても決して自分の考えを言わない。しかし会議が終わると途端に冗舌(じょうぜつ)になり、上司の発言や会議の決定について不平不満をまくしたてる。また、仕事の指示に何か気に入らないことがあると、わざとゆっくり作業したり、忘れたふりをして作業になかなか取り掛からないこともある。そのため、上司や周囲の社員から扱いにくい社員だと思われている。

本事例の場面・行動・困りごと

困った行動に対処するには「その行動を取る人」を問題視するのではなく、「その行動と、その結果生じる影響」について考えるとよい。個人の考え方や行動パターンをすぐに変えることはできなくても、行動のきっかけとなる場面を減らしたり、その影響を小さくすることは可能だ。さて、Fさんの場合、どんな場面をきっかけとして、どんな行動が起きて、その結果、どんな困りごとが生じているのかを整理してみよう。

【きっかけ】 会議などで周囲から意見を求められた場面
【行動】 Fさんは、会議中には決して自分の意見を言わない。何か聞かれても、ごく表面的な回答をするにとどまる。しかし、何か不満そうな表情をしている。会議が終わった後、上司がいないところでは、上司の発言や決定事項に関する不平不満をずっと述べている。
【困りごと】 会議中に意見を言わないので、本人の知識や意見が職場の意思決定に生かされず、その結果、業務効率が落ちることがある。周囲の社員が本人との関わり方に戸惑ったり、距離を置いたりして、チーム内の人間関係に悪影響が出る。

【きっかけ】 上司などから仕事を依頼された場面
【行動】 何か気に入らないことがあると、Fさんはあからさまに不機嫌そうな表情になる。「かりました」と仕事を引き受けるが、催促しないと作業に着手しなかったり、わざとゆっくり作業したりすることがある。会議の決定事項も、忘れたふりをして従わないことがある。
【困りごと】 依頼した作業が計画通りに進まなかったり、不必要な残業が発生したりする。言葉には出さないが明らかに不満そうな態度を取るので、仕事を頼みにくくなる。

Fさんの行動の背景にある考え方

Fさんの行動の背景には「他人の言うとおりにするのは嫌だ」という考え方がある。仕事でも、家庭でも、友人関係でも、人から命令・指示されることを嫌い、不満や怒りを感じやすい。特に「権威」に対して反発するので、職場では上司やリーダーがよくターゲットになる。

また、Fさんは「自分の意見を相手にはっきり伝えるのは危険なことだ」と考えている。そのため、不満や怒りなどの否定的な感情があっても、相手に直接ぶつけるのではなく、間接的な態度や行動で表す。例えば、直接相手に反論したり、意見を述べたりせず、陰で批判したり、嫌味や皮肉を言ったり、不機嫌そうな顔をしてみせたり、ぶつぶつ言いながら作業したり、わざと作業を遅らせたり、時間をかけて残業したりする。

こうした行動をとることで、本人は、相手との直接の対決を避けられるし、自分の不満や怒りを間接的な方法で相手にぶつけることができる。しかし、職場の人間関係はぎくしゃくするし、仕事もうまく進まなくなる。上司や同僚にとっては非常に困った状況だ。

職場で対応できること

Fさんのような行動を取る人に「行動や態度を改めるように」と上司が注意をしたところで、おそらく、本人の反発を招くだけで、何の効果も得られないだろう。そこで「行動のきっかけとなる場面を減らす」ことや「周囲への影響を小さくする」ことに着目して、職場での対策の例を見てみよう。

対策1:相手の態度に感情的に反応せず、一歩引いて落ち着いた態度を保つ

Fさんのような人物は、自分の不満や怒りの感情を適切な形で表現できず、間接的な、嫌味で回りくどい方法で周囲にぶつけている。それに対して、周囲が感情的に反応してしまうと、怒りのぶつけ合いが始まってしまい、余計に事態が悪化してしまう。Fさんの行動にイライラさせられても「何をやってるんだ!」と感情的になるのではなく、「またFさんがいつものパターンで行動しているぞ」と、一歩引いた客観的な視点を持つようにしよう。

特に、親や先生のような言い方で、上から目線で本人に注意をすることは絶対に避けたがよい。例えば「もう社会人なんだから」「他の人の迷惑も考えなさい」「そういう言い方をすると信用をなくすよ」など、説教じみた言い方をすると、ことさら本人の反発を招いてしまう。

対策2:丁寧な口調で、相手に選択の余地を残すように依頼する

Fさんのような人は、失礼な言い方や、決めつけられるような言い方をされると、さらに強く反発する。相手に何かを依頼するときには、たとえ上司と部下の関係であっても、相手を尊重した丁寧な口調で、おだやかに伝えよう。可能なら、本人に選択の余地を残すように伝え、引き受けるかどうかを本人が決めるという形式をとるのがよい。例えば「忙しいところ申し訳ないけど、今日のスケジュール、空いてるかな。この書類を明日までに仕上げてしいんだ。明日の会議で必要なんだけど、どうかな」などと伝える。

対策3:直接関わらず自分の身を守る

もし、あなたの周りにこのような言動をする人がいたら、その人との関わりを最小限にすることも重要な対処法のひとつだ。上司への悪口が始まったら席を立ってその場を離れるなど、なるべく関わらないようにしよう。あなたの業務に支障が出ているあれば、上司に早めに相談しておこう。

対策4:全員が安心して意見が言える職場の雰囲気を作る

あなたの職場には、誰かが発言したときに「それは違う」とすぐに否定したり、「何を言っているんだ」と相手を馬鹿にしたり、その意見を軽んじたりする人はいないだろうか。そうした行動を繰り返す人が職場にいると、周囲の人は自由に意見が言えなくなり、チームの生産性はどんどん下がっていく。

チームの効率を高めるためには、誰が、どんな意見を言っても、何も悪いことが起きない環境をつくること、メンバーが安心して意見を言えるようにすることが重要だ。そのためには、どんな意見であっても、相手の発言を遮らないように最後まで聞くことが必要になる。相手の話を最後まで聞いた後で、発言してくれたことに感謝し、相手の意見を要約して復唱したり、その意見の背後にある相手の立場や考え、提案の背景にあるニーズを正確に理解するための質問をするとよい。

例えば「その意見はとても参考になりました。〜の部分について、少し詳しく聞きたいんだけど、どんな状況だったんですか?」という具合だ。そして、相手の発言のあとで、「なるほど、〜ということですね」と繰り返す。その際には、相手の意見を少しポジティブな表現や、周囲の人にも受け入れられやすいマイルドな表現で要約するとよい。

対策5:態度・言い方・話の内容ではなく、意見を言ってくれたことを歓迎する

Fさんのような人は、自分の意見を冷静に述べることに慣れていない。そのため、つい、批判的な言い方や、嫌な言い方、消極的な言い方をしたり、本筋とは関係のない話題を口にしてしまうこともあるだろう。そんな時は相手の態度や言い方、話の内容に反応するのではなく、まずは意見を述べてくれたことに感謝しよう。批判的な意見やネガティブな意見であっても、「いろんな懸念事項を洗い出しておくのは重要なので、そうした意見も大歓迎。意見を出してくれてありがとう」と、発言してくれたことに対してポジティブなフィードバックをするとよい。

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(この記事は中災防が発行する雑誌『安全と健康』2021年1月号〜12月号に連載した記事を元に、一部加筆したものです。)