ストレスに強い「考え方」を身につける

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ストレスの感じ方には個人差がありますが、それはなぜでしょうか。実は私たちの言う「ストレス」とは、厳密には「ストレス反応」と呼ばれるもので、次のような仕組みで発生しています。

ストレッサー (状況) 認知・判断 ストレス反応 (ストレス)

つまり、ストレスはストレッサーから直接生じているのではなく、私たちの物事のとらえ方や考え方と関わりが深いのです。
 

自動思考とスキーマ

ストレスを起こり方をもう少し詳しく見てみましょう。私たちは何をしているときでも、常にいろいろなことを考えています。しかし、ふだんそれを意識することはありません。ある状況に遭遇したときに、自分でも気づかないうちに起こる考えのことを、心理学用語で《自動思考》と言います。

自動思考の起こり方にはクセがあります。物事のとらえ方や考え方のパターンを《スキーマ》といいます。中でも「~なければならない」というスキーマは強いストレスを生みます。これを「~になったらいい」というスキーマに変えていくことは、ストレスを和らげるのに大いに役立ちます。

ストレス手帳をつける

ストレスをコントロールするということは、この自動思考とスキーマをコントロールすることです。しかし、ふだん気づくことのない自動思考と、長い間なじんできたスキーマを改善するのは簡単なことではありません。心理療法の現場では、次のような「ストレス手帳」をつける試みが行われています。

(1) ストレスを感じた状況
(2) そのときに感じた気分
(3) ストレスを生じさせた考え(自動思考)
(4) その考えの根拠
(5) その状況に対する別の解釈
(6) ストレスが小さくなるような考え方
(7) 気分の変化

(5)や(6)の考え方は、これまでの自分の考え方とは異なるものです。最初は違和感を感じるでしょうが、繰り返し練習すれば、だんだん新しい考え方が自分のものになってきます。記入例を参考にして「ストレスが小さくなるような考え方」をぜひ身につけてください。

サンプル1: 会議で同僚に反論された!!

(1) ストレスを感じた状況
 会議で同僚に反論された
(2) そのときに感じた気分
 怒り、不安
(3) ストレスを生じさせた考え(自動思考)
 そのようなことをしたのは、自分を困らせたいからだ
 みんなの前で恥をかかされた
(4) その考えの根拠
 今まで何も言わなかったのに突然反論してきた
 全体から見るとわずかなことで揚げ足をとられた
(5) その状況に対する別の解釈
 同僚はただ不明な点を確認したかった
 私を困らせようという意図は無かった
(6) ストレスが小さくなるような考え方
 同僚にも意見を述べる権利がある
(7) 気分の変化
 動揺が少しおさまった
 今なら攻撃的にならずに再反論できる

サンプル2: 産業医面談の時間に社員が来ない!!

(1) ストレスを感じた状況
 産業医面談のとき社員にすっぽかされた
(2) そのときに感じた気分
 イライラ、怒り、不安
(3) ストレスを生じさせた考え(自動思考)
 来ないのは産業医の業務や存在を軽んじているからだ
(4) その考えの根拠
 連絡もなしに時間を守らないのは社会人にあるまじき非礼だ
 当社の産業保健活動の充実ぶりが社内ではあまり認識されていない
(5) その状況に対する別の解釈
 直前に電話がかかってきたのかも
 急な仕事でずっと客先に出ずっぱりなのかも
 面談の連絡そのものが届いていないのかも
(6) ストレスが小さくなるような考え方
 急な仕事が入ってくることはあり得る
 みんなそれぞれ重要な仕事を抱えている
 産業医面談が特別なものではなく当たり前になっている
 (そして、それ自体は望ましいことである)
(7) 気分の変化
 イライラが少しおさまった
 今のうちに次の人の健診結果と面談記録をチェックしておこう

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この記事は、私が専属産業医をしている企業内で配信しているメールマガジンの内容を、ウェブ用に書き直したものです。