メンタルヘルス不調の早期発見と早期対応のコツ

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前回の記事では、職場で見られるメンタルヘルス不調について、半年~1年以上の長期にわたって業務パフォーマンスが低下すること、スムーズな職場復帰のためには職場での対応や専門スタッフによるフォローアップが欠かせないことなどを述べました。

メンタルヘルス不調の影響を最小限におさえるには、早期発見と早期対応が大切です。今回は、自分自身や部下の体調のチェックポイントや、いつもと違う様子の変化に気付いたときの対処法を解説します。

■早期発見のキーワードは「いつもと違う」

メンタルヘルス不調に気付くための重要なキーワードは「いつもと違う」です。いつもと違う変化の背景には、メンタルヘルス不調が隠れていることがあるからです。

◇いつもと違う自分

まず、自分自身の体調に注意するポイントを説明します。メンタルヘルス不調でよく見られる「うつ状態」では、次のような変化が現れます。

こうした症状が2週間以上も続くような時は、産業医などの社内の窓口や医療機関に相談しましょう。仕事に影響を与えそうな時は、上司に状況を伝えておきましょう。

◇いつもと違う部下

部下の「いつもと違う体調の変化」は、 (1)遅刻や欠勤といった勤怠の変化、(2)業務パフォーマンスの変化、(3)行動や様子の変化として現れます。

◇「いつもと違う部下」に気付いたら声をかけて話を聴く

いつもと様子の違う部下に気づいたら「いつもと様子が違うけれど、どうしたの?」と声をかけて話を聴いてみましょう。「背景に病気がありそうだ」、あるいは「病気があるかどうかよくわからない」と感じたときには、産業医や保健師など企業内の担当者に相談します。

このように、(1)いつもと違う様子の部下に気付いたら、(2)声をかけて話を聞き、(3)病気の可能性があれば産業医につなぐ、という手順を踏むことが、メンタルヘルス不調の早期発見・早期対応につながります。

◇相談窓口の整備と周知、社員への教育も重要

メンタルヘルスに関わる相談窓口を整備することも大切です。相談窓口としては、産業医や保健師など社内資源のほかに、社外の医療機関や支援機関を利用する方法もあります。体制作りには「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(厚生労働省)も参考になります。地域産業保健センターなどに相談してもよいでしょう。

相談体制が整備できたら、社員に対するメンタルヘルス教育を継続して行い、相談窓口の利用法、相談窓口との連携方法などを周知しましょう。メンタルヘルス不調に対する正しい知識を持ち、適切に対応できる職場風土を作ることが重要です。

■「いつもと違う」部下、3つの事例

◇事例1:仕事上のトラブルが原因で寝不足になったAさん

部下のAさんは27歳、入社3年目の男性社員です。仕事熱心でがんばり屋です。しかし最近、どうも元気がない様子。仕事の報告も遅れ気味で、上司であるあなたから催促しないと出てこないこともあります。

「どうしたの? 大丈夫?」と一度は声をかけてみたものの「少し夏バテで……すみません」と、あまり話してくれません。それ以上は深追いせずにしばらく様子を見ることにしました。

2週間たっても、Aさんの調子は変わりません。再びあなたが声をかけたところ、仕事がうまくいっておらず、この仕事に向いていないのではと悩んでいると打ち明けられました。

話を聴いたあなたは、仕事のことはアドバイスをしようと思いましたが、体調のことは産業医と相談するようAさんに話しました。産業医面談の結果、健康管理室でしばらく体調をフォローするが、業務については通常に対応してよいということになりました。

その後Aさんは病院で治療を受け、不眠や気分の落ち込みは徐々に改善していきました。仕事に関しても、上司のフォローやアドバイスのおかげで、以前のような順調なペースに戻り、少しずつ自信を取り戻すことができました。

◇事例2: 家族が病気になり、疲れがたまっているBさん

部下のBさんは32歳、優秀なチームリーダーです。しかし最近、顔色が悪く、仕事中もぼんやりしている様子が目に付きます。上司であるあなたが話を聞いてみると、郷里の母親が病気で入院してしまい、母親の見舞いと父親の世話をするために、週末ごとに実家に帰っているそうです。平日も遅くまで仕事をしており、週末も実家との往復で全く休めず、疲れがたまっているとのことでした。

ちょうどBさんには、新しいプロジェクトをまかせようと思っていたのですが、この体調では心配です。あなたは部長にも相談し、まずは産業医の意見を聞くことにしました。

産業医面談の結果、このまま無理を続けると体調が悪化する懸念があるため、問題が落ち着くまでは残業が続かないよう調整が必要であるという意見でした。また、不眠の治療のため病院に行くようすすめられました。職場で話し合いを行った結果、新しいプロジェクトではBさんの負担が大きくならないような体制を取ることにしました。

◇事例3: ときどき休みがちになるCさん

新しく部下になったCさんは、ときどき急に休むことがあります。以前から精神科にかかっているという話も聞いたこともあります。上司であるあなたはCさんに注意をしようと思い、まずは本人に話を聞いてみることにしました。

すると本人から、以前からうつ病の治療をしていること、体調が悪いときにはときどき休んでしまうという話がありました。あなたは、休みを取るときは早めに連絡が欲しいこと、業務の調整が必要であれば早めに相談して欲しいことをCさんに伝えました。さらに、健康面についてどのように配慮すればよいのか産業医面談を受けるよう勧めました。

産業医面談の結果、病気の治療は今後も続けなければならず、体調の日々の変化には注意が必要だが、特別な就業制限は不要という返事でした。そこで、業務の進捗や体調について本人とよく話をするようにし、その中で適宜調整を行なうことで、チーム全体の業務が円滑にすすむよう工夫しました。

■ 気づく・声をかける・つなぐ

今回は、メンタルヘルス不調の早期発見のために、「いつもと違う様子」に気付いて「声をかけて」話を聞くというやり方を紹介しました。これはメンタルヘルス不調に限ったことではなく、日常のマネジメントでも活用できる基本的な手法です。

本人に話を聞いて、背景に病気の存在がありそうだ、あるいは、病気があるかどうかわからないと思ったときは、すみやかに産業医などに相談しましょう。上司だけで対応しているうちに問題が深刻になることもあります。現場のエキスパートである上司と、健康管理のエキスパートである産業医とが、早期に連携することが重要です。

次回の記事では、メンタルヘルス不調の発生を予防する職場改善について、その考え方と進め方をご紹介します。