VDTタイマーの効果を、「ランダム化比較試験(RCT)」という科学的な方法を用いて評価しました。作業時間や小休止への意識や行動は明らかに改善し、自覚症状にも改善を示唆する傾向が見られました。
作業時間をターゲットとした新たな指導法の開発

VDT作業(PCを用いた作業)の疲労症状には、目の疲れ、肩こり、イライラ感などがあります。それらを予防するために、モニタやキーボードの位置や座り方など、作業姿勢を改善する方法や、画面の写り込みや部屋の明るさなどを作業環境を改善する方法などがあります。液晶ディスプレイや小型PCの普及で、作業姿勢や作業環境は少しずつ改善してきています。
もうひとつ「連続作業時間」や「合計作業時間」なども疲労症状と大きく関係があります。しかし、PC作業時間は増える一方です。また、1時間を目安に小休止を取ることも推奨されていますが、作業中はなかなか時間の経過に気づきにくく、疲労症状をためてしまいがちです。
そこで、一定時間の経過をユーザーにお知らせするソフト「VDTタイマー」を用い、作業時間を意識させることで、ユーザーの疲労症状が緩和できるかどうか、ランダム化比較試験(RCT)という科学的な手法を用いて調べてみることにしました。
某企業でランダム化比較試験を実施
ある企業のソフトウェア開発を行う部署で、安全衛生委員会の健康作りイベントとして、この調査への協力を依頼しました(社内で調査を行う前に、一般ユーザーを対象にモニターテストを行い、VDTタイマーの使用がPCの業務使用に悪影響を与えないというデータを得ておきました)。
応募者54名を、VDTタイマーを使用するグループと、使用しないグループの2つにランダムに割り当てました。それぞれ、調査開始時、1ヶ月後、2ヶ月後の3回、Web上でアンケート調査を行いました。
アンケートの項目は「年齢、性別、VDT作業の種類、作業時間、小休止を取っていたか、自覚症状の有無、生産性への影響」などです。
結果:ユーザーの意識と行動は明らかに改善

上のグラフにあるように、VDTタイマーを使うことによって、作業時間の経過や、連続作業時間をより意識するようになりました。まあ、画面上にアラームが表示されるので、当然の結果ですね。さらに、小休止に対する意識も向上し、実際に小休止を取ると答えた人も増加しています。
結果:使用を継続することで自覚症状の改善効果も期待

一般的に、こうした介入研究で、自覚症状の改善などの効果が見られるには、数年単位の時間がかかります。今回の調査も、たった2ヶ月の期間でしたので、それぞれの自覚症状のスコアには有意な変化が見られませんでした。
ただし、詳しく解析したところ、いくつかの項目で改善傾向を示す結果も得られ、VDTタイマーの使用を続けることで、自覚症状が改善する可能性も示唆されました。
結論:VDTタイマーは作業疲労の予防に有効
今回の調査で、これまで介入することが難しかった「PCの作業時間」「連続作業時間」について、「作業時間の経過をお知らせする」というシンプルなソフトウェアを用いることで、作業者の意識や行動に改善をもたらすことがわかりました。このソフトウェアの使用を続けることで、目の疲れや肩こりなどの症状をさらに改善できる可能性も示唆されました。