魔法のコミュニケーション術 「あいさつ+1」「ありがとう+1」

      魔法のコミュニケーション術 「あいさつ+1」「ありがとう+1」 はコメントを受け付けていません

「職場のコミュニケーションを活性化しましょう」と言われても、じゃあ何をどうすればいいのかと困ってしまいます。誰でも簡単に実践できる魔法のコミュニケーション法、「あいさつ +1」と「ありがとう +1」を紹介します。

上司になかなか相談できずに困っている部下、そんな部下の悩みに気づいてさえいない上司。以前の記事(こんな上司 vs こんな部下、困ったときの対処法)で、この深刻な状況を打破するためには、お互いに積極的にコミュニケーションをとることが必要であると述べました。

しかし、「さあ、コミュニケーションをとりましょう」と言われても、何を話せばいいのか、どうすればいいのか、戸惑いを感じる人が多いのではないでしょうか。

今回の記事では、「コミュニケーション」の正体について専門的に解説したあとで、誰でも簡単にできるコミュニケーション改善法を2つご紹介します。

コミュニケーションは「ストローク」のキャッチボール

コミュニケーションは、よくキャッチボールに例えられます。キャッチボールのボールに相当するものを、専門用語で「ストローク」と言います。つまり、コミュニケーションとはストロークを交換することなのです。

ストロークは、相手に幸福や喜びを与える肯定的なストローク、相手を不愉快・憂鬱にさせる否定的なストロークに分類されます。また、話す内容や声の大きさなど、言語によるストロークと、表情、態度、行動などで表される非言語のストロークがあります。それぞれどんなものがあるか、次の表を見ながら考えてみましょう。

ストロークは「心の栄養」

ストロークについて、もう少し詳しく説明すると「その人の価値や存在を認めるための言動や働きかけ」と言うこともできます。人はストロークなしには生きられないと言われており、ストロークは「心の栄養」とも言われます。また、幼少期に両親から与えられたストロークが、精神の発達や人格形成に大きな影響を与えることも知られています。

気持ちのよい人間関係とは、肯定的ストロークを与えあう関係です。一般的に、よい人間関係はますますよくなり、悪い人間関係はますます悪くなります。なぜなら、よい人間関係では肯定的なストロークが活発に交換され、悪い人間関係では否定的なストロークが交換されるか、あるいはストロークが全く交換されないからです。このことは「裕福な者はますます裕福になる」という経済の法則に似ているため、ストローク経済の法則と呼ばれています。

良好な人間関係を築くための魔法のテクニック

良好な人間関係を築くということは、できるだけ多くの肯定的ストロークを交換することです。とても簡単で、効果的な方法を2つご紹介します。

「あいさつ +1」

「あいさつ +1 (プラス1)」とは、あいさつに何かひとつストローク(情報)を追加して返すという方法です。あいさつは「相手の存在を承認する」という、基本的な肯定的ストロークです。しかし、何となく儀礼的なあいさつを交わしているだけでは、人間関係は発展しません。あいさつに+1のストロークを加えることで、会話のきっかけが生まれ、ストロークの交換がはじまるのです。

「あいさつ +1」のサンプルを紹介します。次の文で下線部がある場合と、ない場合とを比べてみてください。

「おはようございます。」
「おはよう。今日も暑くなりそうだね。

「おはようございます。今日も雨ですね。」
「おはよう。昨日からずっと降ってるね。うちの周りは大変だったよ。

「ありがとう +1」

日本人は「以心伝心」「あうんの呼吸」を大切にする民族です。「言わなくても通じるだろう」と、ちょっとしたことは言わずにすませる傾向があります。ところが、実際には黙っていては何も伝わりません。ちょっとしたこと、当然のことでも「ありがとう」「助かるよ」と感謝の気持ちを口に出すことが、とても大切です。ただし、せっかくの「ありがとう」も、相手に気持ちが伝わらなければ効果がありません。

「ありがとう +1」とは、「ありがとう」と言うときに、作業の手を止めて、相手のほうにちゃんと顔をむけるというテクニックです。「ありがとう」という言語によるストロークに、体の動作や顔の表情など非言語のストロークをプラスするのです。たったこれだけで、あなたの「ありがとう」は数段レベルアップします。

やってみよう! +1のコミュニケーション術

「あいさつ +1」、「ありがとう +1」は、職場だけではなく、家庭、学校、地域社会、あらゆる場面で使える方法です。初対面の相手にも、顔なじみの相手にも、同じように使いやすく、同じように効果があります。

「コミュニケーションは難しい」と尻込みせずに、まずは「あいさつ +1」と「ありがとう +1」を心がけてみましょう。どんな人間関係も、ストロークを交換した数だけ、良好なものになっていくのです。

参考資料

「交流分析入門」 (桂 戴作、杉田 峰康、白井 幸子、発行:チーム医療)

この記事は、私が専属産業医をしている企業内で配信しているメールマガジンの内容を、ウェブ用に書き直したものです。