僕が産業医として勤めている会社では、マネジャーに対するメンタルヘルス教育として、『いつもと違う部下に気づく』ことが大切だと教えられています。このことはずいぶんと徹底されています。しかし、気づいた後にどうすればいいのかという点に関しては、十分に理解されていないようです。実際にマネジャーに聞いてみると、次のような疑問を持っていることがわかりました。
Q1 : 産業医に相談すべきなのか、人事に相談すべきなのかわからない。
A1 : まず産業医に相談します。産業医は健康上の問題の有無を判断します。
上に示したような「いつもと違う」部下の行動の背後には、しばしば病気が隠れています。「いつもと違う」部下に気づいたら声かけをして話を聞きます。健康上の問題ついて確認する必要があるように感じられたら、まず産業医のところへ行くよう指示します。健康上の問題がないと判断された場合には、続いて通常の労務管理を行います。
Q2 : 部下が話をしてくれない。あるいは産業医のところへ行きたがらない。
A2 : 「自分が相談に行く」と告げ、上司が産業医のところへ相談に行きます。
「いつもと違う」部下に声をかけたが、「何でもない」といって話をしてくれない場合には、2週間ほど状態の変化を観察したのちに、再度声かけをします。それでも話をしてくれない、あるいは産業医のところへ行きたがらない場合には、「会社の決まりなので自分が行ってくる」と、必ず本人に告げてから、上司自身が産業医に相談します
Q3 : 部下を病人扱いしているようで、産業医のところへ行けと言いにくい。
A3 : 当社では、産業医面談は特別なことではありません。
当社では毎年、全社員を対象に産業医面談を行っており、産業医と会うことは特別なことではありません。部下に対する「安全配慮義務」の実行責任は直接の管理監督者である上司にあります。上司は産業医を積極的に利用するようにしてください。