テレビ、ビデオ、DVD、エアコン、家中にあふれるリモコンを全部ひとつにまとめてしまうのが学習リモコンという製品だ。米 PHILIPS 社の Pronto シリーズは、液晶タッチパネルを搭載した PDA のようなデザインの学習リモコンで、パソコンを使って画面を自由に編集することができる。海外の最新の学習リモコン事情を紹介する。
学習リモコンとは、あらかじめ有名メーカーのリモコンに対応しているほか、各種のリモコンから送信される赤外線信号を記憶することで、あらゆるリモコンの機能を学習して使うことができるものだ。また、リモコンを使った一連の動作を、ひとつのボタンにまとめて割り当てることもできる。
さて、この写真をみてほしい。カラー液晶タッチパネルにハードウェアボタン、まるで PDA のようだが、実はれっきとした学習リモコンなのだ。PHILIPS 社の Pronto TSU 6000 というこの商品の最大の特徴は「ProntoEdit」というソフトを使って画面デザインを自由に編集できることだ。従来の学習リモコンでは、本体のボタンに機能を割り当てることしかできなかったが、この Pronto シリーズを使うとボタンの配置やデザインまで、液晶画面の表示を完全にカスタマイズできるのだ。
例えば衛星放送などの多チャンネルを利用するとき、チャンネルボタンに放送局のロゴマークが表示されているとわかりやすい。オーディオ機器がたくさん並んでいる場合は、実際の配置を図や写真で示してもいい。
複数のリモコンを並べて使っていても、一度に使うボタンはほんの数個だ。これをテレビ用やDVD用などのように用途別に整理できればどんなに便利だろうか。AV マニアのお父さん用、機械オンチのお母さん用と、利用者ごとに専用の画面をデザインするのもいいアイディアだ。
世界のリモコンマニアが集うサイト「Remote Central」(2019年現在リンク切れ)では、各社の学習リモコンの豊富なレビューや、ユーザー間の意見交換を行うフォーラム、ユーザーの作成した各種ファイルが利用できる。Pronto TSU 6000 に対応したスキンや、画面デザイン用のグラフィック部品、各社リモコンの設定ファイルなども豊富に公開されている。
さすがに 999 ドルはちょっと……という人には 16 階調モノクロモデルの Pronto NG TSU3000 というモデルもある。USB 対応、メモリ 4MB、十字キーを含むハードウェアボタン 17 個と実用的なスペックだ。価格は 399 ドル、カラー液晶モデルに比べればずいぶんお手頃になっている。
さて先日、PHILIPS 社の製品に待望の新モデルが発表された。 表示可能な色数は 64,000 色へと増え、十字ボタンが追加され、より美しく使いやすいボタンデザインが可能となる。価格は 999 ドル、今年第四半期に発売予定だ。
ここまで読んで「確かに便利そうだけど、たかがリモコンに 999 ドルはやりすぎなんじゃないの?」などと気弱なことを考えてはいないだろうか。実はまだまだこんなものではないのだ。PHILIPS 社のサイトにアクセスすると、次のような写真が出迎えてくれる。
PHILIPS 社の学習リモコンの製品ページ
一見タブレット型のコンピュータかと思ってしまうこの機械こそ、究極の学習リモコン iPronto に他ならない。640 × 480 の VGA 画面を備え、無線 LAN 対応でネットサーフィンもメールもできてしまい、家中の家電製品をコントロールできるだけでなく、ブラウザで番組表をみながらチャンネルを変えられるという、学習リモコンの決定版だ。
SONY しかり Microsoft しかり、なんとかして家電製品を統合する情報家電をお茶の間に送り込もうと苦心しているが、現時点でその位置に一番近いのは、実は学習リモコンなのかもしれない。
使いにくいリモコン、無駄な多機能……文明のもたらしてくれる便利で快適な生活を追い求めているうちに、いつしか人類は家電のしもべに成り下がってはいないだろうか。今こそ、暴虐で傲慢な機械の支配から逃れ、再び人間が家庭の主役となる時なのだ。学習リモコンによる人間性の解放、これこそが家電ルネッサンスといっても過言ではないだろう。
えーと、とりあえず、リビングにリモコンが 5 つ以上ある人は学習リモコンの利用を検討してはいかがでしょうか (笑)。