この記事では、最新の生成AIを活用してウェビナーの質と準備スピードを劇的に向上させた実戦的なノウハウと、登壇予定のウェビナーについてご紹介します。

産業保健スタッフ向けコミュニティサイト「さんぽLAB」にて、2回シリーズのウェビナーを担当することになりました。
- 2026年1月:「メンタルヘルス不調の復職支援」
- 2026年2月:「メンタルヘルス不調者の職場復帰とリワークの活用」(2026年1月告知予定)
今回は、この2月のウェビナーを準備するにあたって実践した「生成AIフル活用」の制作プロセスをご紹介します。
「生成AIが気にはなっているけど、実務ではどう使えるの?」という方に、少しでもヒントになればうれしいです。
あえて問う、リワークの真の価値とは?
2月のウェビナーのテーマは「メンタル不調者の職場復帰とリワーク」です。このタイトルを見て、「ああ、リワーク施設の紹介をして、リワークのメリットや活用のポイントを紹介するのだな」と考えた方も多いのではないでしょうか。
しかし、実際のところ、私としては「復職支援において、リワークは必ずしも必要ないのでは」と考えています。
もちろんリワークの効果を否定するわけではありません。しかし、社内の復職支援の体制がある程度しっかり整備されていれば、外部資源(リワーク)に頼らずとも、再発を防ぎ、安定就労を実現することは十分に可能です。
当日は、よくある「リワークのメリット紹介」にとどまらず、現場でのリアルな視点から、一歩踏み込んだ内容をお伝えします。
- 復職支援で本当に押さえるべきポイント
- リワークを使わずに社内でできること
- リワークを使う場合に注意すべきこと、リワークの限界
- リワークの利用の有無にかかわらず、企業が行うべきこと
- 企業が整備するべき復職支援のプロセス
「とにかくリワークに行けばOK」と、過度な期待を寄せている事例も目にしますが、リワークにはいろいろな制約もありますし、リワークを利用したからといって、必ずしも復職がうまくいくわけでもありません。詳しくは、ウェビナー当日にお話したいと思います。
AIを駆使したウェビナー制作のプロセス
さて、新しいテーマで講演資料を作成するにあたって、今回は生成AIを「思考のサポート役」として全面的に活用してみました。その具体的なプロセスを公開します。
1. 「Deep Research」で徹底調査
Perplexity、ChatGPT、Geminiの、それぞれの「ディープ・リサーチ機能」を同時に活用し、リワークの活用方法や注意点、効果などを調査し、レポートにまとめてもらいました。複数のAIによる調査結果を比較することで情報の偏りを防ぎ、客観性の高いデータを収集しました。
現在はChatGPTとGeminiの有料版、およびPerplexityの無料版を併用しています。Geminiの性能が向上したことをうけ、今月から有料プランを契約しました。1月からはChatGPTを無料プランにする予定です。
2. 音声入力でアイディアを一気に吐き出す
リサーチで得た膨大な情報をどう整理するか。ここで活用したのが「音声入力」です。頭の中にある「これだけは伝えたい」という断片的なアイディアや、実務でのエピソードを、マイクに向かって一気に話し、音声入力でテキスト化します。
音声入力は、キーボードで打ち込むよりも格段にスピードが速く、思考を止めずに効率よくアウトプットできるのが最大の利点です。ただ、音声入力したテキストは、誤認識があったり、文脈がバラバラだったり、言い間違いもそのまま文字起こしされていたりと、非常に読みにくい状態です。

そこで、この「文章のかたまり」をAIに読み込ませ、「論理的でわかりやすいウェビナーの構成案にまとめて」と指示を出します。すると、自分一人では整理しきれなかった思考の断片が、みるみるうちに「ウェビナーの骨組み」へと変わっていきました。
以前は、手書きのメモをパソコンに打ち込んだり、音声データを自分で聞き返して書き起こしたりと、準備の「作業」だけでひと苦労でした。また、「あれもこれも話したい」と欲張ってしまい、情報の取捨選択に頭を悩ませることも多かったです。
生成AIと対話をしながら作業を進めるようになったことで、驚くほどスムーズに内容をまとめられるようになりました。
3. 生成AIとの「壁打ち」で構成を練る
音声メモや調査結果をベースに、AIとの対話を繰り返して構成をさらに整理していきます。
参加者の満足度を高めるには「告知したテーマやタイトル」と「当日の内容」、そして「参加者のニーズ」の3つが一致していることが重要です。そこでAIを壁打ち相手にして「研修の目的」を何度も問い直し、具体的なターゲット像に合わせた研修のテーマ(ゴール)を設定しました。
みなさんもウェビナーや講演に参加したとき「事前に想像していた内容と違った」「聞きたかった内容ではなかった」と感じてがっかりしたことはありませんか? この段階で「研修のテーマ」「告知内容」「研修の内容」「参加者のニーズ」が一致するように、しっかり構成を整えておくことが最重要ポイントです。
《想定する参加者》
- 「リワークの具体的な活用イメージが湧かない」担当者
- 「復職判定に自信がない」担当者
- 「社内の復職支援の取り組みを改善したい」担当者
《研修のテーマ(ゴール)》
- 休職中の生活リズムの回復について、具体的な支援のポイントを理解する
- 外部資源(リワーク)の特徴を知り、適切なタイミングで利用できるようになる
- リワークで「できること」と、企業が「すべきこと」の境界線を理解し、リワークに過度に依存しない、適切な復職支援の体制を作る
さらに、生成AIと壁打ちしながら、構成案をブラッシュアップします。「参加者、テーマ、ウェビナーの目的を考慮して、わかりやすい構成案を作成してください。わかりにくい部分やテーマに関係ない部分があれば教えてください」と生成AIに指示を出し、出力結果を参考にして構成を修正していきます。
生成AIって、いつも優しくて前向きな意見をくれますよね。でも、それだけだと改善点が見つかりにくいこともあります。
ですから私はあえて、「参加者の期待に合わないところや、内容のわかりにくいところ、論理的でないところを批判的に評価して」と依頼するようにしています。
あえて厳しい評価をお願いして、自分では気づけなかった欠点を探す。このひと手間が、より良いものを作るための大切なポイントになります。
4. NotebookLMを活用したスライド作成の効率化
ウェビナーの構成が固まった後は、Googleの「NotebookLM」を活用してスライド資料の原型を作成します。NotebookLMは参照する資料を厳密に指定できるため、生成AI利用でよく問題となる「ハルシネーション(事実でない内容を出力してしまうこと)」を予防することができます。独自の構成案に基づいた正確な資料作成には最適なツールです。

ただし、標準のスライド作成機能では一度に生成できるのが15〜20枚程度という制限があります。50分のウェビナーをカバーするにはボリュームが不足するため、今回は「分割して生成する」という手法を取りました。 具体的には、スライド作成機能の「鉛筆マーク(カスタムプロンプト)」を使い、「構成案の最初からパート2までのスライドを生成して」「構成案のパート3から最後までのスライドを生成して」と複数回の指示を出します。
プロンプトを工夫すれば、スライドの色味やレイアウトなど、自分好みのデザインのスライドを生成できるようです。面白い活用法として、以前作ったスライドをAIに見せて「これと同じようなデザインにするための指示文を考えて」と頼むと、スライド生成用のプロンプトが生成されます。今度、試してみたいですね。
5. スライドの合成・変換とPowerPointでの仕上げ
NotebookLMで生成されたスライドはPDFファイルとして出力可能です。これをPowerPoint形式に変換して1つのファイルに結合します。

生成されたスライドはきれいにデザインされていますが、自分好みではないところや、わかりにくいところ、説明の流れにあわせて、スライドの内容やメッセージの表現を修正したいところもあります。そこで、PowerPoint上で調整を行いました。
NotebookLMで出力されたPDFデータを画像ファイルに出力して、さらにPowerPointファイルに変換する方法はいくつかあります。お使いの生成AIにたずねてみましょう。
NotebookLMのスライドはすべて画像として作成されています。そこで、背景色と同じ図形(四角形)を重ねて元の文字を隠し、その上から新しくテキストボックスで文字を入力したり、既存の図やスライドを差し込んだりして仕上げていきました。

講演の準備の際に、最も多くの工数と時間を要するのがこの「スライド作り」です。50〜60枚のスライドを作るために、従来は数日を要していた作業が、NotebookLMを活用する方法なら、わずか半日程度にまで短縮されました。精神的なプレッシャーや、マウスを操作する手の疲れも大幅に軽減され、より内容のブラッシュアップに集中することができました。
6. タイムマネジメントと配布資料・進行台本の準備
最後に、当日の発表を円滑に進めるための最終的な準備です。ここでもAIが大活躍しました。
まず、50分の発表時間をどう配分すべきか、AIにアドバイスをもらいました。「構成案」と作成した「スライド」を読み込ませ、「この内容で50分で発表する場合のタイムスケジュールを組んで。特に時間を割くべき重要箇所も教えて」と依頼します。これにより「導入に5分、パート1はしっかり時間をかけて15分、パート2はさらっと5分、パート3はスライドが多いので少し省略した方が良いかも」といったように、具体的な時間配分だけでなく、発表や資料の修正についてのアドバイスまで得られます。
さらに、参加者の手元に残る「配布資料」の準備もAIに依頼しました。「構成案」と「スライド」をAIに読み込ませ、A4用紙1〜2枚に内容を要約し、エッセンスを凝縮した配布資料を作成してもらいました。出力結果をWordに貼り付け、内容を手作業で修正して、あっという間に完成です。
さらに、スライドと時間配分をもとにした「進行台本」も作ってもらいました。スライドの構成や進行表に合わせて、伝えるべきポイントを箇条書きにしたものです。まあ、ここまでしっかり内容を練り上げているので、すでに構成や内容は頭に入っているのですが、念のため、当日は、これをチラチラ見ながら話せば、迷子になることはなさそうです。
ちゃんとした配布資料を作りたいと思いながらも、時間がないので、ついスライドの縮小印刷で済ませてしまうことも少なくありません。こうした情報の要約や加工は、生成AIが最も得意な分野です。どんどん活用していきましょう。
おわりに:AI時代における「人間の価値」を再考する
今回、ウェビナーの準備に生成AIをフル活用してみて、そのスピードとクオリティの高さには正直驚きました。リサーチから構成案の検討、スライド作成、時間配分のシミュレーション、配布資料の作成までサポートしてくれるAIは、私にとって欠かせないツールだと言えます。
AI活用のコツは、従来の作業手順をそのままAIに代替させるのではなく、「生成AIありき」で作業手順を見直すことです。これにより、AIに任せられる部分では大幅なスピードアップと効率化が実現できました。

| 従来の作業手順 | AIを用いた作業手順 |
|---|---|
| 調査 → ブレスト → 構成案検討 → 読み上げ原稿作成 → スライド絵コンテ作成 → スライド作成 → 配布資料作成 (参考:Beyond Bullet Points メソッドを用いたプレゼンテーションの作成方法 ) | AIで調査 → 音声入力でブレスト → AIで内容整理 → 構成案検討 → AIでスライド生成 → スライド修正 → AIで配布資料を作成 → AIで進行台本を作成 |
しかし、AI活用を突き詰めるほど、「ここまでAIに任せられるなら、人間が講師として登壇する意味ってどこにあるんだろう?」 という素朴な疑問が湧いてきます。一般的な知識やガイドラインを伝えるだけなら、もう、このままAIに原稿を読みあげさせるだけで十分かもしれません。
しかし、職場復帰支援のような、正解のない複雑な現場で本当に求められているのは、教科書的な知識そのものではなく、現場で悩んだ葛藤や失敗から得た「教訓」や、それぞれの現場での実践につながる「ノウハウ」なんだと思います。そして、経験をもとにそれらを熱く語れるというのが、今のところ、生身の人間の価値なのかもしれません。
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2026年1月・2月のウェビナーでは、そんな私自身の経験や知見をしっかりお届けしたいと思っています。
- 2026年1月のウェビナーの申し込みページ
- 2026年2月のウェビナーの申し込みページ(※2026年1月 告知予定)
少しでも気になるテーマがあれば、どうぞお気軽にご参加ください。
皆さまと当日お会いできるのを楽しみにしています。




