※2003年12月時点の記事です。
日米で販売されているタブレットPC 19機種のスペックを表にまとめてみた。データをじっくりと眺めていると、日米のタブレットPC事情が見えてくる。タブレットPCの現状と今後、そして現時点のベスト・チョイスはどの機種なのか考えてみたい。
□ 日米タブレットPC 19機種 スペック比較表 (新しいウィンドウが開きます)
※海外では20を超えるメーカーから数多くのタブレットPCが販売されていますが、今回は、日米のMicrosoftのサイトに掲載されている国内6機種と海外13機種のタブレットPCのスペックを調査しました。
■ 総評
国内モデルと比べて、海外ではさまざまなメーカーから多くのタブレットPCが販売されている。タブレットPCには、ディスプレイ部分だけ取り外せるスレート型、ノートPCの液晶部分が裏返るコンバーチブル型、大型の液晶パネルと内蔵光学ドライブを搭載したノートPCタイプなどがある。
海外モデルのほとんどはPentium M CPUを搭載したCentrinoモデルになっている。しかし国内モデルは、2002年12月前後に発売された古い機種のまま変化に乏しい。さらに、6機種のうちすでに2機種が販売中止になっているなど、とても残念な状況だ。
■ タブレットとしても使えるノートPC
海外モデルに見られる特徴的な動きとしては、「タブレットPCとしても使える高性能ノートPC」というモデルがいくつか登場していることだ。acerやgatewayからは、大型の14.1型液晶と本体内蔵のCD-RW/DVDドライブを搭載したモデルも登場している。acerの最上位モデルでは、CPUにPentium 4 (2.6GHz)を搭載し、ふつうのノートPCと同じ形をしているものまである。
タブレットPCが高性能ノートPCを目指したとき、どうしてもネックになるのが1024×768ピクセルという画面の狭さだ。しかしTOSHIBAのPortege M200シリーズは、12インチながら1400×1050という高解像度の液晶パネルを搭載してきた。今後、タブレットPCの世界も高解像度化が進むことが予想される。
■ 重量別に見てみよう
タブレットPCにとって重量は気になる要素だ。今回調べた機種を重量別に並べてみると、それぞれのタブレットPCがどのようなコンセプトで設計されたのかが見えてくる。
■ ジャスト1.0kg : NECの最軽量モデル
今回調べた19機種の中で最も軽かったのがNECのスレート型のタブレットPC、VersaProだ。重量はわずか1.02kg。筐体もスマートで、厚さは15~17mmしかない。しかし、内蔵ハードディスクが20GBであったり、PCカードが使えなかったり (そのかわりCFカードスロットが搭載されている)、IEEE1394端子や内蔵モデムが省略されているなど、軽量化と引き替えにスペックが犠牲になっている部分もある。
■ 1.3kg~1.5kg : スレート型の独壇場
1.5kg未満のモデルではスレート型ばかりが目立つが、acerのTravelMate C111 TCi(C110)はコンバーチブル型ながら1.45kgと健闘している。キーボードを持たないことは良くも悪くもスレート型の特徴だ。しかし、このクラスになるとUSB 2.0端子、IEEE1394、赤外線、内蔵モデム、Bluetoothなど、外部接続端子に妥協は見られない。
acer の軽量コンバーチブル機 TravelMate C111 TCi
液晶ディスプレイがぐるんと回ってぱたんと倒れる
■ 1.5~2.5kg : B5ファイルサイズのコンバーチブル機
1.5~2.5kgまではコンバーチブル型のタブレットPCが並んでいる。CD-RW/DVD-ROMなどの光学ドライブは内蔵しておらず、ノートPCのイメージで言えば、B5ファイルサイズ型の1スピンドル機と同じような性能だ。
■ 2.5~3.0kg台 : A4ファイルサイズ型の大きめの機種
2.5kg以上になると、14.1型の液晶と内蔵光学ドライブを搭載した、ノートPC指向の強いマシンばかりになる。さすがにこのクラスのマシンを小脇に抱えて使う、というわけにはいかないが、「重いタブレットPC」ではなく「ハイエンドノートPCにタブレットがついた」と考えれば活用の幅が広がる。今後、さらに高解像度で大型の液晶パネルを搭載してくると予想される。
■ スペックから分析するタブレットPC
海外の製品を眺めてみると、タブレットPCだからといって性能に妥協することなく、大きさ・重さ・価格などにおいて同じクラスのノートPCとほとんど同じスペックをもっていることがわかる。
■ CPUと処理速度
Transmeta社の省電力CPU Crusoeが登場したとき、こぞって「省電力PC」が作られたが「動作のモタモタ感」が問題になった。Pentium Mの登場によって処理速度と省電力の両立がはかられたことは、タブレットPCにとってもノートPCにとっても幸せな出来事だった。各社のタブレットPCのスペックを見ても、Crusoeはその役割を終えつつある。
■ 本体サイズとバッテリー
本体を小型軽量にすればするほど搭載できるバッテリーの容量は少なくなる。現在のほとんどのタブレットPCのバッテリー駆動時間は3~4時間程度だ。今後、燃料電池などの新技術の実用化によって、一日中バッテリーのみで駆動できるようになれば、タブレットPCはさらに一皮むけた存在になるだろう。
■ 液晶パネルの改良
タブレットPCはディスプレイの向きを縦にしたり横にしたりして、さまざまな場所で使用されるため、視野角が広く視認性の良い液晶ディスプレイが求められる。また、今後の性能アップのためには画素数を向上させた高密度の液晶パネルも必要になる。一部で実用化のはじまった有機ELディスプレイが注目を集めているようだ。
■ 価格
同じような性能のノートPCと比較すると、タブレットPCは一般的に割高だ。メーカーによってばらつきがあるが、国内の価格差は5~10万円、海外では約200ドルだと言われる。販売台数や部品の違いなどの事情はあるだろうが、実際のところはハードウェアの差によるものは30~60ドルで、価格差の大半はOSのライセンス料だという指摘もある。
■ デザイン
スレート型のマシンは薄さを強調した先進的なデザインになっている。しかし、ノートPCユーザーにもアピールできるタブレットPCの本命、コンバーチブル型のマシンは、大がかりな商品展開ができないという制約があるためか、他のノートPCと比べると「ビジネスライク」で「無難な感じ」にまとまっている印象をうける。
■ 性能アップと国内販売のタイミングのズレ
製品が登場するタイミングは少し遅れるが、ノートPCのために開発された新技術は、必ずタブレットPCにも導入されている。しかし、われわれ日本人にとっての最大の問題は、海外の新機種がいつ国内で販売されるのかということだ。現在、国内モデルは海外モデルに1年遅れをとっている。現行の海外モデルのうち、どの機種が、どのタイミングで、そしてどのくらいの価格で国内に持ち込まれるかが、今後の国内のタブレットPC事情を大きく左右することになる。
■ 現時点でのベスト・チョイスは?
海外では、来年春にもタブレットPCのモデルチェンジが噂されている。液晶パネルの高密度化、大型化、視野角と発色の改善など、液晶パネルを中心に進化していくことが予想される。しかし、それらの新製品がすぐ日本国内に導入されるとは考えにくい。現行の海外モデルのうちのいくつかが、やや遅れて国内に入ってくるものと思われる。
先日、TOSHIBAのPortege M200シリーズの国内モデルの販売が発表された。1400×1050ピクセルという高解像度液晶を搭載した次世代のモデルだが、国内では企業向けの販売しか行われず、その価格はなんと38万円だという。海外では同じ製品が2,500~2,700ドルで一般に販売されている。タブレットPCが日本国内でいかに冷遇されているかがわかる。
acer TravelMate C111 TCi : 239,800円(メーカー直販)
そうなると、現時点のベスト・チョイスはacerのTravelMate C111 TCiしかない。国内で個人が手に入れることができる唯一のPentium M搭載マシンであり、コンバーチブル型としては最も軽量で、性能や価格面でも一般のノートPCにひけをとらない。海外モデルの中から選ぶときにも候補にあがるほど、とてもバランスのいいマシンなのだ。
さあ、買おう。いますぐ買おう。メーカー直販サイトで注文すると、予備バッテリーが1つサービスでついてくるぞっ!! これでバッテリー駆動時間が2倍にっ!!
■ タブレットPC市場を活性化するためにできること
うーん、ここら辺で、まだタブレットPCに参入していないSONYに、燃えるデザインのタブレットPCをつくってもらうしか!! VAIO UとかVAIO X505のディスプレイがくるんと回ってパタンと倒れるところを想像するだけでっ!! もうっ!!
メーカーの努力に期待するだけでは物足りない。われわれユーザーにできることは何かないだろうか……ひとつある、そう、買うことだ(笑)。買ってその便利さを他人に伝え、他人にも買わせる。ノートPCを買う知人がいたら、うまいことだまくらかしてタブレットPCを買わせよう。きっと感謝されるはずだ。
■ まとめ : 欲しいときが買い時
「欲しいときが買い時」という言葉がある。これは、3~6ヶ月周期で新製品が登場し、性能がぐんぐん上がっていくような製品を買うときに自分を勇気づける言葉だ。しかし今日、半年後に新製品がでるかも知れないが出ないかも知れない製品を買うときにも、この言葉が使えるということを発見した。何か常識人として大切なことを忘れているような気がするが、これからも気がつかないふりを続けていきたい。