仕事で使えるアンガー・マネジメント:上司と同僚を「クライアント」だと思え!

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仕事をしていて、「上司や同僚がなかなか理解してくれない」とか「あの部署がなかなか動いてくれない」と、イライラしたり、悩んだりしたことはありませんか? 社内のコミュニケーションや意見調整がうまくいかないと、「自分は何をしているんだろう」と、だんだん気が重くなってしまうこともあります。

社内の人を巻き込むのは難しい

社内調整とは、おおざっぱに言うと、「その人に関心を持ってもらうこと」、「理解してもらうこと」、「賛同してもらうこと」、そして「行動してもらうこと」です。

しかし、相手の考えや行動を、こちらの思いのままに操ることはできません。それぞれの部署や担当者には、それぞれの事情や立場があります。こちらの提案を、すぐに受け入れられない都合が何かあるのかもしれません。

また、ひとりひとりの考え方や行動にもそれぞれクセがあります。飲み込みが早い人もいれば、少しずつ、ゆっくり理解する人もいます。変化を受け入れやすい人もいれば、変化が苦手な人もいます。気になることを何でも口に出す人もいれば、なかなか口に出さない人もいます。

カウンセリングや治療の場面では当たり前に理解しているのだが……

私は産業医として、日々、多くの社員の健康相談やカウンセリングを行っています。そうした場面では「他人の考えや行動を変えることはできないこと」を、よく理解しているつもりです。

例えば、クライアントや患者さんに対して、「なぜこの人は理解してくれないのか」とか「なぜこの人は行動してくれないのか」とイライラしたり、焦ったりすることはありません。どうすればその人が行動しやすくなるのか、どうすればその人の問題が解決できるかを、冷静に考えながらカウンセリングを進めていきます。

しかし、自分の仕事のコトとなると、なかなか難しい

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しかし、それ以外の仕事のことになると話が違ってくるのです。「あの人がなかなか理解してくれない」とか「行動してくれない」というように、つい「あの人のせいで、自分の仕事が進まず困っている」と考えてしまいます。

そんなふうに考えると、何か自分が損をしているような気がして、ますますイライラしたり、焦ったりします。また、努力すること自体が空しくなったり、相手と顔をあわせるのが面倒になったりして、さらに仕事が進みにくくなるという悪循環に陥ってしまいます。

上司も同僚も「クライアント」だと思えばいい

ビジネス書などには、仕事のコツとして「上司を自分の顧客として考えろ」とか「社内の組織を自分の顧客と考えよう」などと書かれています。

ふだん私たちは上司や同僚のことを「同じ会社の仲間」とか「自分と同じ側の人間」だと考えています。すると「このくらいは理解してくれているはず」とか「このくらいは当然やってくれるはず」という(やや過剰な)期待を抱いてしまうのです。しかし、そうした期待どおりに物事が進むことは少なく、期待と現実のギャップにイライラしてしまうのです。

そこで、上司や同僚を自分の「クライアント」だと考えてみると、相手への期待の内容が変わってきます。クライアントには、こちらにはわからない都合や事情があり、その中で判断したり行動したりするものです。「なかなか理解してくれない」とか「行動してくれない」ということがあっても、別に驚くことではありません。

人にはそれぞれ事情があり、その人のタイミングでしか変われない

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アンガーマネジメントの解説書『対人関係療法の精神科医が教える-「怒り」がスーッと消える本』(水島広子、大和出版)には、「他人を変えることはできない」「人はその人のタイミングでしか変わることができない」という言葉が紹介されています。「自分が誠心誠意、努力をすれば相手は必ず変わるはずだ」というのは、勝手な思い込みにすぎないのです。

また同著には「その人にはその人にしかわからない事情があり、その中でベストを尽くしているのが現状だと考えてみよう」と書かれています。なかなか理解してくれない相手や、なかなか動いてくれない相手がいたときには、「相手には相手にしかわからない事情や都合があって、その中でベストを尽くしているのが現状なのだ」と考えると、「いちいち腹を立てても仕方がない」と割り切りやすくなります。

組織にもそれぞれ事情があり、それぞれのタイミングでしか変われない

会社組織に対しても、同じことが言えます。つまり「組織はそれぞれのタイミングでしか変われない」、「その組織には、こちらにはわからない何らかの事情や都合があって、 その中でベストを尽くしているのが、現在の状況なのだ」と考えてみるのです。そう考えると、理解してくれないとか、動いてくれないというストレスを手放しやすくなります。

たいてい、うまくいかない原因は、相手の組織の業務の都合や事情によるものだったりします。いったん冷静になってからのほうが、相手が理解しやすい状況や、行動しやすい状況をどう作っていけばよいか、次のアイディアが浮かびやすくなります。

まとめ:組織やそのメンバーに対してイライラしたり、 怒ったりしても意味がない

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会社の中で新しい取り組みを始めるときや、何らかの社内調整を行うときには、「相手が理解してくれない」「相手が動いてくれない」という状況はつきものです。そうした状況にいちいちイライラしていると、余計なストレスが生じてしまいます。

社内のコミュニケーションや社内調整で悩んだときには「相手をクライアントだと思うようにする」「相手には相手にしかわからない事情や都合がある」という視点を思い出すようにしたいと思います。社内調整を行うとき、皆さんは何か心がけていることはありますか?