第77回日本産業衛生学会総会 (名古屋) に参加して

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4月14~16日に名古屋国際会議場で行われた日本産業衛生学会に参加してきました。産業保健の分野では最も規模が大きいもので、産業医1年生の僕にとっては最高の勉強の機会でした。

朝6時の新幹線に乗るために、目覚まし時計を午前4時30分にセットしておいたのですが、午前2時、午前3時、午前4時……と目が覚めてしまい、まるで遠足の前の小学生のように楽しみにしていました。

今回の学会では、主にメンタルヘルスや健康管理、また職場で見られる病気についての発表を聞いてきました。3日間の発表はどれも面白く、書きとめたノートは実に30ページ以上になりました。産業保健における現状の課題、そして他社での取り組みなど、これから産業医として活動していく上でとても役立つ内容でした。

第一線で活躍されている産業保健スタッフの方ともお話をする機会があり、先達の貴重な助言をいただくこともできました。心理学の専門家も参加しされており、減量、禁煙、禁酒など生活習慣の改善に重要な「行動変容」についても教えていただきました。ここで出会った人たちは、これから仕事をしていく上での重要人物ばかりで、なるほどこれが「人脈づくり」なのかと、もっと名刺を持ってくればよかったと後悔することしきりでした。

「職場の人間」を対称とした調査研究は、実験室の中で行う研究とは異なり、景気の変化、季節による業務内容の変化、業種の違いなどによってデータが大きく左右されます。「きちんとした研究」を行うためには、データの正しい取り扱いに気をつけなくてはいけません。そこを理解していないと、夏の東京の気温と冬の北海道の気温を単純に比較して「北海道は東京より寒冷な気候である」と結論づけるようなことになります。

今回の学会では、データの測定や比較の方法に問題がある発表が多かったような気がします。また、「各地の気候に応じた対策が必要だ」などという具体性のない提言もよく耳にしました。しかし、発表された調査データそのものはとても興味深く、また、それぞれの職場改善のための取り組みも評価に値すべきもので、参考になりました。

現在、産業保健に対するニーズはさまざまに多様化しています。しかし、以前のように、有毒ガスの対策をしろとか、じん肺の検診をしろとか、法律に従って一方的に指示を出していればよかった時代とは違って、生活習慣病やメンタルヘルスなど最近の課題の多くは、現場の従業員の協力なしに解決することができません。

つまり、円滑に産業保健活動を進めていくためには、今までのように専門職として独自に活動するだけではなく、同じ目的を持つする会社の一員として、周囲の社員たちと協調する姿勢が必要になります。それにはまず、自らすすんで現場に飛び込み、「僕は君たちの仲間なんだよ」、「こんなふうに役に立つんだよ」ということを認めてもらわなければなりません。

従業員ひとりひとりと気軽に話ができ、管理職ともまともに話ができ、経営者とだって対等に話ができる産業医に、従業員ひとりひとりの健康を気づかいながら会社全体の生産性に貢献できる産業医に、医療の専門家でありながら国際ビジネス感覚をも備えた、そんな夢のような産業医になりたいと、心から思った3日間でありました。