クライアントの問題に巻き込まれないようにする

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 私が産業医として仕事をしているとき、つまり、従業員のメンタル不調の問題、病気やケガなどの健康問題、その他、健康問題に絡んだ労務問題など、そうした問題に「支援者」として関わるときに、いつも気をつけていることがあります。

 それは「巻き込まれないこと」です。当事者の問題解決に関わっているうちに、いつの間にか自分もその影響を受け、問題を適切に処理できなくなってしまうことがあるのです。

 例えば、メンタル不調を訴える社員に対して、こちらが知恵を絞っていろいろなアドバイスをしても、ほとんど反応が無いケースがあります。そんな時、自分がまるで無力なように思えて落ち込んだり、やる気を出さない相手にイライラしたりすることがあります。

 あるいは「早く復帰してがんばりたい」という社員を応援する気持ちが強すぎて、職場復帰の調整に時間がかかる人事担当者にイライラしたり、本人の病気に理解を示さない上司の態度に腹が立つことがあります。

 このように、支援者が、本人に対して「何とかしてあげたい」と強く思うようになったり、本人や他の関係者に対して腹を立てたりする時には要注意です。感情が大きく動かされるときには、本人の問題に巻き込まれていないだろうかと考えてみる必要があります。

 本人の問題に支援者が巻き込まれてしまうと、状況や問題点を適切に把握することや、問題解決に向けて適切に調整することが難しくなります。スーパーバイザーや指導者に相談したり、関係者同士で情報共有を行って誤解を解消したりすると、こうした事態を避けられます。