職場のメンタルヘルス不調の早期発見・早期対応には、上司の働きが不可欠

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職場のメンタルヘルス不調を早期に発見し、早期に対応するためには、管理監督者の果たす役割が重要になります。管理監督者の役割とは「部下のいつもと違う変化に気づいて」「声をかけて話を聴き」「健康管理スタッフにつなぐ」ことです。

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■「いつもと違う」変化に気づく

メンタルヘルス不調は、①勤怠状況の変化、②業務パフォーマンスの変化、③行動や様子の変化などを招きます。

①勤怠状況の変化

勤怠状況はメンタルヘルス不調の影響を敏感に表します。たとえばメンタルヘルス不調のために不眠が続くと、夜間は一睡も出来ず、出勤するはずの時間に猛烈な眠気に襲われ、遅刻や欠勤になることがあります。最初は月に数度のことですが、週単位、月単位でみると、徐々に勤怠に異常が出てきます。急な休みが増えたときは要注意です。

②業務パフォーマンスの変化

メンタルヘルス疾患の多くでは集中力や判断力が低下するため、業務パフォーマンスが悪化します。そのため、仕事の能率が悪くなる、ミスが増える、仕事の結果がなかなか出てこなくなるという現象がみられます。上司への報告や相談が遅れたり、残業や休日出勤が不釣り合いに増えたりすることもあります。

業務パフォーマンスの低下は、そのことが新たなストレスとなって本人を苦しめます。自分が情けない、会社に申し訳ない、自信が無くなったと悩んだ末に、退職を申し出るケースもあります。

③行動や様子の変化

職場での行動や様子を見ていると、業務中にぼんやりする、表情や行動に元気がなくなるという変化がみられます。感情の起伏が激しくなり、ふだんでは考えられないような暴言を吐いたり、同僚や顧客とトラブルを起こしたりすることもあります。機械の取り扱いを誤って事故を起こすケースや、服装や髪型などが乱れて不潔になることもあります。

■「どうしたの?」と声をかけて話を聴く

このような「いつもと違う」部下の様子の変化に気づいたら、まずはそのことを指摘し、部下の話を聴きます。「最近遅刻が多いようだけど、どうしたの? 夜はちゃんと眠れてるの?」「最近は残業が多いけど、どうしたの? 疲れはとれてる?」「仕事の報告が遅れ気味だけど、何かあったの?」と、具体的に声をかけるとよいでしょう。

「いえ、大丈夫です。何でもありません」と部下が話をしてくれない場合は、もう1〜2週間様子をみます。しかし、その後も「いつもと違う変化」が続いているのであれば、「先日話をした件だけれど、今も続いているね。どうしたの?」と、再び声をかけます。

部下の話を聴くときには、一方的に批判したり決めつけたりするのではなく、「共感的な態度」を持つように心がけます。共感的な態度とは、相手の言っていることを完全に納得して理解することはできなくても、「なるほど、相手はそう考えているのだな」と相手の立場に立って受け止めることです。こうした話の聴き方は「積極的傾聴」とも言われ、管理職に求められる重要な技能のひとつです。

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■健康管理スタッフにつなぐ

「いつもと違う様子の変化」の背景には、メンタルヘルス不調が隠れていることがあります。話を聴いて、どうも背景に病気がありそうだと感じた場合、あるいは、病気があるかどうか自分には判断できないと感じた場合には、速やかに健康管理スタッフに相談して、治療の必要性や職場での対応についてアドバイスを求めて下さい。

しかし、その変化は必ずしもメンタルヘルス不調によるものだとは限りません。ただの夜ふかしかもしれないし、仕事で難しい問題にぶつかっているのかもしれないし、家庭の問題かもしれません。産業医面談の結果「病気ではない」という意見が返ってくることもあります。その場合には、上司として、通常のルールに従ってきちんと対応します。

「いつもと違う変化」に気づくためには、部下の「いつもの様子」を把握しておくことが必要です。それができるのは、ふだんから部下に接している職場の管理監督者しかいないのです。