睡眠とパフォーマンスに関する科学的なデータと対策

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健康に暮らしていくために、また、仕事や勉強のパフォーマンスを上げるためには、十分な睡眠が必要です。しかし、忙しい現代の生活の中で、つい、睡眠時間を削ってしまうこと、ありますよね。平日の寝不足を、週末に解消する、という生活を続けている人も多いと思います。しかし、週末に寝だめをしているにもかかわらず、翌週の月曜日になんだかスッキリしないとか、どうも午後から疲れが出てくるなんてこともあります。

睡眠に対する私たちの知識は、本当に正しいのでしょうか。厚生労働省がまとめた「健康作りのための睡眠指針2014」から、気になるデータをいくつかご紹介します。

週末の寝だめの効果は水曜日に切れる

平日の寝不足を週末に寝だめで解消する、という人も多いかと思います。「寝だめ」の効果は科学的にどのように検証されているのでしょうか。週末に8時間ほどしっかり寝だめをしても、平日の睡眠時間が5~6時間未満だと、翌週の木曜日あたりから集中力の低下や作業中のミスなどが目立ち始める、という研究結果があります。

厚生労働省の睡眠指針では、1日の睡眠時間が5~6時間を下回ると「寝不足」と定義されています。しかし、1日に6時間寝れば大丈夫というわけではなく、1日に必要な睡眠時間には個人差があります。例えば、毎日8時間の睡眠を必要とする人が平日に7時間しか寝られないと、たった1時間の不足ではありますが、やはり翌週の集中力やパフォーマンスが水曜日~木曜日あたりから徐々に低下していきます。

平日の睡眠時間が慢性的に不足している時には、週末の寝だめだけでは疲労が十分に回復できないことも知られています。この状況を改善するには、毎日十分な睡眠を取るか、せめて、週の半ば、水曜日の夜には十分に睡眠を取る、などの対策が必要です。

寝不足が2週間続くと、徹夜明けと同じくらいミスが増える

仕事が忙しくて寝不足が続いていても、仕事の緊張感からか、なぜかテンションが上がっていて、あまり眠気を感じないことがあります。研究結果からも、慢性的な寝不足が続いているときに、逆に、眠気を感じにくくなることがあることがわかっています。しかし、わずかな睡眠不足でも、それが2週間以上続くと、日中の集中力やパフォーマンスが徹夜明けと同じくらい低下する、というデータもあります。

睡眠時間が短くても、日中に眠気を感じないから自分は大丈夫だと思っていても、もしかしたら、寝不足のせいで本来のパフォーマンスが発揮できていない、ということもありそうですね。

20時以降は能率ダウン、24時以降は酔っ払い並み

朝のほうが効率的に作業が進む朝型の人もいれば、夜の方が集中できるという夜型の人もいます。しかし科学的には、目を覚ましている時間が13時間を超えると作業能率が低下し始め、17時間を超えると、酔っ払い運転と同じレベルになる、というデータがあります。つまり、朝7時に起きた人は、夜20時以降は作業能力が低下し始め、夜24時以降は酔っ払い運転並みになる、ということです。

効果的な昼寝の取り方

昼食後に眠くなった時、眠気覚ましにはどんな対策が有効なのでしょうか。日中の眠気を覚まし、午後からの生産性を高めるためには、15分ほどの昼寝をすることが効果的だと言われています。特に、昼寝の直前にコーヒーなどを飲んでカフェインを摂取しておくと、ちょうど昼寝が終わった頃にカフェインの効果でスッキリと目が覚め、眠気対策にはさらに効果的です。

しかし、長く寝すぎると寝覚めが悪くなり、午後3時を過ぎてから昼寝をすると夜の睡眠にも影響してしまいます。昼寝をする場合は「午後3時までに、30分以内」がおすすめです。

体内時計を狂わせないように

健康的な睡眠は、体内時計の働きにも大きく関係しています。人間の体には一定の周期があり、体内時計にあわせて目が覚めたり、眠くなったりします。体内時計がずれてしまうと、夜になってもなかなか寝付けなかったり、朝、目が覚めにくくなったりします。

体内時計は、起床する時間に影響を受けます。そのため、起床する時刻を一定に揃えることが重要です。また、朝起きたら、なるべく早く太陽の光を浴びると、しっかりと目が覚め、体内時計をリセットできます。起床直後に体内時計をリセットできないと、夜、寝付く時間がだんだん遅れていき、翌日の朝に目覚めにくくなります。つまり、土日に朝寝坊をしてしまうと、体内時計が後ろにずれてしまって、月曜日の朝に起きるのがつらくなるのです。

就寝前 3~4 時間以内のカフェイン摂取は、個人差もありますが、入眠を妨げたり、睡眠時間を短くしたりすることがあります。カフェインには覚醒作用のほか利尿作用もあるので、夜中にトイレに行きたくて目がさめる原因にもなります。カフェインはコーヒー(1杯あたり150mg)のほか、緑茶(30mg)、紅茶(30mg)、ココア(45mg)、栄養ドリンク(50mgなど)などにも含まれています。

自分にあった睡眠環境づくり

寝室の温度・湿度・騒音・光なども睡眠の質に関係します。特に、夜間では室内の照明が明るいと目が覚めてしまい、なかなか眠くならないため、寝る前には照明の明るさを落としたり、電球色のような暖かい色の明かりにしたり、間接照明のような、直接光が目に入らないような照明を利用すると良いでしょう。

1日何時間寝ればよいか

よく「私は長く寝ないとダメ」とか「自分は短くても大丈夫」などという人がいますが、1日に必要な睡眠時間には個人差が大きく、また、年齢や季節によっても異なっています。夜間の睡眠時間は、10代前半までは8時間以上、25歳で約7時間、45歳では約6.5時間、65歳では約6時間だそうです。夏場は睡眠時間は短くなり、冬には長くなる傾向があります。

個人差はありますが、一般的には1日に必要な睡眠時間は6~8時間程度です。とはいえ、日中の眠気で困らない程度の睡眠時間であれば十分です。

健康的な生活のためには、忙しい平日でも、最低5時間、できれば6時間以上の睡眠を取ることが推奨されています。どうしても睡眠時間を確保できない場合は、週末や週半ばなどを利用して、寝不足を少しでも解消するしかありません。その時は、これまで紹介したヒントを参考にしてください。

まとめ:お手軽な裏技は存在しない……かも

何だか、どれも当たり前のことばかりです。良質な睡眠を取るための「お手軽な裏技」は存在しないのかもしれません。マンガ「ドラえもん」で、未来の世界で夜更かしに使われている「睡眠圧縮剤」(1時間の睡眠で10時間分の効果が得られる薬)が欲しい気もしますが、21世紀の現代においては地道な工夫が一番のようです。

参考

「健康作りのための睡眠指針2014」(厚生労働省)