脳のギアをニュートラルに入れよう~心と体を"休息型"に変える『自律訓練法』 《練習編》~

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前回ご紹介した「自律訓練法」というのは、誰でも簡単に身につけられるリラックス法のひとつです。ストレスから心身の健康を守るだけでなく、体の調節能力や自己回復能力を高め、自己の能力を最大限に発揮できるようになります。今回は自律訓練法の簡単な練習方法をご紹介します。
 
自律訓練法は自己催眠の技法なので、声の調子やタイミングなどが重要です。本を読むよりも実際に目で見た方がずっとよくわかります。できれば専門家の指導を受け、正しい練習法を身につけるとよいでしょう。書籍やビデオなども市販されています。

1. 姿勢を整える

椅子に深く座り、ひざの間をゲンコツひとつ分くらい開け、足の裏を床につけます。背もたれやひじ掛けは使いません。背中を軽く丸めてやや前傾した姿勢になります。手のひらを下に向け、ももの上に軽く置きます。メガネ、腕時計、イヤリング、ネクタイ、靴など、体を締め付けるものは、ゆるめるか外しておきましょう。

その姿勢のまま、首と肩に力を入れて、思い切り首をすくめた後、力を抜いて腕や肩をだらんとさせます。これで筋肉の緊張が自然にほぐれ、自律訓練法の姿勢ができました。最後に目を軽く閉じます。

2. 深呼吸

腹式呼吸で深呼吸をします。鼻から息を吸い込み、おへそのあたりをふくらませて、十分に息を吸ったら、口から細く息を吐きます。吸うときの倍くらいの時間をかけて、十分に吐き出します。3回くらい深呼吸した後は、いつものペースの自然な呼吸に戻します。

3. 「気持ちが落ち着いている」(安静練習)

ここからが自律訓練法の本番です。「きも~ちが~~、おちついて~いる~~」と、声には出さず、頭の中で、ゆっくり穏やかに5~6回繰り返しましょう。気持ちが落ち着く風景などを思い浮かべながら練習してもよいでしょう。

このような言葉を「公式言語」(formula)と言います。公式言語は一字一句間違えずに唱えましょう。「だんだん気持ちが落ち着いてくる」ではなく「気持ちが落ち着いている」である点にも注意して下さい。

4. 「右腕が重たい」 (重感練習)

軽く注意を右腕のほうに移しましょう。右腕とは肩から指先までの腕全体のことです。腕の重みを思い浮かべながら「みぎうでが~~おもた~~い~」と、ゆっくりと、5回くらい頭の中で唱えます。

右腕が終わったら、左腕、右足、左足と順番に練習します。左利きの人は左腕から始めるとよいでしょう。

私たちは普段、無意識のうちに腕の重さを筋肉で支えています。筋肉の緊張が解けてくると、腕の重みが感じられるようになります。最初はうまくできなくても、気にせずに次へ進みましょう。

5. 「消去動作」

自律訓練法を行ってリラックスした状態になると、意識がぼんやりして、筋肉もゆるんできます。練習の最後に以下の「消去動作」を行い、日常生活のための適度な緊張を取り戻すようにします。慣れないうちは練習を行ってもあまりリラックスできないかもしれませんが、必ず消去動作を行ってください。

消去動作
・両手で握り拳を作り、グー、パー、グー、パーと閉じたり開いたりを5~6回。
・次に腕を曲げたり伸ばしたり、腕の屈伸運動を4~5回。
・大きく背伸びをして深呼吸を2~3回。足先まで伸ばすようにする。
・最後に目を開ける。

練習の注意点とコツ

自律訓練法は自己催眠の技法なので、最初はとっつきにくいかもしれません。確実に習得するために、いくつか注意点とコツがあります。

1セッションは5分以内、1日3セッションが目安

上記の一連の手順を60~120秒で行い、これを3回繰り返して1セッションとします。1セッションにかける時間は5分くらいです。練習の回数は1日に2~3セッションを目安に、じっくり継続して行うことが大切です。

気合いを入れないこと

「気分を落ちつけよう!! 腕を重くしてやろう!!」と気合いを込めているようでは、リラックスできるはずがありません。「腕が重いってどんな感じかな」とぼんやりと考えながら、重く感じられるのを待つような態度をとります。これを「受動的注意集中」といいます。自律訓練法の大切なコツです。

雑念が浮かんでもそのままにしておく

自律訓練法の最中に、次から次へと雑念が浮かんでくることがあります。これはリラックスする過程で起こる、ごく自然な反応です。無理に雑念を消そうとせず、ただ公式言語を念仏のように繰り返しておきます。

気分が悪くなったら練習を中止して消去動作を行う

練習中、リラックスして血圧が下がり、少し気分が悪くなってしまうことがあります。練習を中止して消去動作を行えば次第に落ち着いてきます。

3週間くらいしたら「温感練習」を付け加える

重感練習に慣れてきたら続けて温感練習を行いましょう。「みぎうでが~~あたたか~い~」という公式言語を頭の中で繰り返します。筋肉の緊張がとれると毛細血管の血流が良くなり、皮膚温が実際に2~3度上昇します。その変化を「あたたかい」と感じるのです。

最初は静かな場所で練習する

慣れてくれば電車に乗っていても自律訓練法を行うことができますが、最初は、静かで、落ち着く環境で練習しましょう。今回紹介した、背もたれのない椅子に座って行う姿勢の他にも、仰向けで寝ころんで行う姿勢や、大きな背もたれのある安楽椅子にゆったりと腰掛けて行う姿勢もあります。

参考

「ストレスを簡単に解消! 自律訓練法」(佐々木雄二、ゴマブックス)
「標準 自律訓練法テキスト」(日本自律訓練学会 教育研修委員会)

この記事は、私が専属産業医をしている企業内で配信しているメールマガジンの内容を、ウェブ用に書き直したものです。