脳のギアをニュートラルに入れよう~心と体を"休息型"に変える『自律訓練法』~

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現代を生きる私たちは常に多くのストレスにさらされています。ストレスに対処する方法としては、マッサージ、エステ、アロマテラピー、ヒーリングミュージックなど、多くの方法が提案されていますが、特別な道具が必要だったり、費用がかかったり、万人向けではありません。

『自律訓練法』というのは、自己催眠の技法を使い、体の緊張を取るリラクゼーション法です。手順は標準化されており、いつでも、どこでも、誰でも、簡単に行えます。

ストレスから心身の健康を守り、疲労回復に役立つだけではなく、他にもいろいろな効果があります。例えば本番前の「あがり」を防いだり、集中力を高めたりする働きがあり、スポーツ選手や音楽家などのトレーニングにも取り入れられています。また、緊張性の頭痛や肩こり、不眠、冷え性などの改善にも有効です。

脳のギアをニュートラルに入れる

ストレスに対して人間の体はさまざまに反応します。そこで重要な働きをしているのが脳幹部です。脳幹部は自律神経や感情の中枢であり、ホルモンの働きや自然治癒力とも関係があります。

ストレスによる緊張状態が続くと、脳幹部の働きにゆがみが生じます。その結果、不安やイライラ、肩こり、頭痛などのストレス症状が生じるのです。自律訓練法は、リラックスすることで脳幹部への刺激を取り去り、その働きを正常化することができます。

心身を「休息型」にする

人間の体には、周囲の環境が変わっても、体温や血圧などを一定に維持しようという働きがあります(ホメオスタシス)。過度のストレスが持続するとホメオスタシスが崩れてしまいます。例えば、自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があり、ストレスを感じると交感神経の働きが活発になり、血圧が上がったり、脈拍が早くなったりします。

自律訓練法を行うと、交感神経の働きを鎮め、副交感神経の働きが活発になります。すると心身がリラックスした「休息型」の状態となり、再び安定したホメオスタシス状態に向かって回復をはじめるのです。

自律訓練法の持つ東洋テイスト

自律訓練法は1930年代に催眠療法から生まれました。催眠状態に誘導されると、患者はとてもリラックスした状態になり、心身に好影響が現れたのです。催眠状態を詳細に観察したところ、アルファ波の増加、四肢の筋肉の弛緩、血流増加、皮膚温の上昇などの変化が見られました。つまり催眠状態には、ストレスに対して予防的、治療的な効果があることが発見されたのです。

自律訓練法による自己催眠状態は、座禅やヨガの瞑想状態と多くの共通点があります。しかし、宗教的色彩や思想的背景は一切ないこと、習得するために長年の苦行は一切必要ないこと、誰でもスムーズに身につけられることなど、相違点もあります。

1回5分 × 1日3回 × 3ヶ月 でマスター

自律訓練法の技法は体系化、標準化されており、同じように練習すれば、誰でも身につけることができます。しかも、特別な道具は必要なく、いつでもどこでも、自分ひとりで実行できます。必要なのは、1日10分くらいの時間をさいて、根気よく練習を続けることです。

自律訓練法は自己催眠の技法なので、最初は取っつきにくい部分もあります。しかし1ヶ月もすれば、効果が実感できるようになります。慣れてくれば、どんな場所でもリラックス状態を作り出せるようになります。そうなると、日常の疲労が大幅に緩和されるだけでなく、ここぞという時に自己の能力を最大限に発揮できるようにもなります。

次回予告

次回の記事では、自律訓練法の練習法を「さわり」の部分だけ紹介します。興味のある方は、ぜひ実践してみてください。 練習法についての本も多く出版されていますが、標準化された練習法を学ぶためにはビデオテープやDVD、CDといったメディアを利用するか、日本自律訓練学会の認定したトレーナー研修を受けた人に教えてもらうとよいでしょう。

参考

「ストレスを簡単に解消! 自律訓練法」(佐々木雄二、ゴマブックス)
「標準 自律訓練法テキスト」(日本自律訓練学会 教育研修委員会)

この記事は、私が専属産業医をしている企業内で配信しているメールマガジンの内容を、ウェブ用に書き直したものです。