アサーション (1) ~自分の意見をさわやかに表現する~

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言いたいことをはっきり言えなくて、後で悔やんだことはありませんか? 強い口調で言いすぎてしまったと、後で気まずい思いをしたことはありませんか? 私たちは誰もが、職場で、家庭で、気持ちよくコミュニケーションを交わしたいと思っています。しかし、自分の意見を素直に表現することは、思っている以上に難しいものです。

あるアメリカの心理学者によると、人間関係のあり方には大きく分けて3種類あるとされています。1つ目は、自分のことだけを考えて他者を踏みにじるやり方、2つ目は、常に自分よりも他者を優先してしまうやり方、3つ目は、自分のことも考え、他者のことも配慮するやり方です。

例えば次のような場面で、あなたはどんな言動をとるでしょうか。

事例 : 営業マンAさんとB課長

Aさんはある会社に勤める営業マンです。夕方、客先から会社に戻ったAさんはパソコンを立ち上げて仕事にとりかかりました。今日は取引先から苦情を頂いており、明日までに宿題を仕上げなくてはなりません。いつもより帰りが遅くなりそうだと覚悟したその時、上司のB課長がやってきてこう言います。「本部から頼まれたこの報告書、明日までに仕上げてくれないかな。」

タイプ1: 客からの苦情を思い出してイライラしていたAさんは、明らかに不機嫌そうな声で「明日までって言われても、こっちも仕事があるんです。いつもいつもこんな時間に仕事を持って来て、少しは考えて下さいよ!」と言う。B課長は困った顔をしながら立ち去る。後になって、Aさんは上司に強く言いすぎたこと、上司の指示をはねつけたことが気になり、結局その日は仕事に集中できない。翌日からもAさんとB課長の間は何となくよそよそしい。

タイプ2: Aさんは、今日の仕事はいつ終わるだろうかという不安を押し殺しながら、上司の命令だからとあきらめ「はい、わかりました。」と言う。B課長は「頼んだよ」と言い残して帰ってしまう。その日Aさんは、客と上司を恨み、自分を情けなく思いながら、誰よりも遅くまで残業をすることになる。

タイプ3: Aさんは「実はお客様から宿題を頂きまして、明日までに仕上げなくてはならないので、今日は遅くなりそうなんです。」と、ていねいに、しかし、はっきりとした口調で言う。B課長はしばらく考えた後で「そうか、しかし他にこの仕事をまかせられる人はいないし、あさっての午前11時まででいいから、やってもらえないか。」と再び頼む。Aさんは頭の中でスケジュールを調整して「わかりました。」と引き受ける。その日Aさんは客からの仕事に集中し、いつもより30分遅くなっただけで帰ることができる。

さわやかな自己表現 “アサーション”

いかがでしたか。皆さんのやり方はタイプ1~3のどれに近かったでしょうか。いささか極端な例でしたが、3種類のやり方の特徴を理解していただけたと思います。

タイプ1は、自分の意見をはっきりと主張していますが、相手の言い分や気持ちを無視して自分の気持ちを押しつけている「攻撃的なやり方」です。

タイプ2は、一見、相手の意見を尊重しているように見えますが、実は自分の気持ちを押し殺していて、自分が傷ついたり相手に対して恨みがましい気持ちになったりする「非主張的なやり方」です。

タイプ3は、自分も相手も大事にしており、意見の食い違いがあっても歩み寄ろうとするやり方で「アサーティブなやり方」と言います。

アサーティブに自分の意見を言うこと、すなわち「アサーション」を身につけることは、お互いを大切にしながら素直なコミュニケーションを交わすためのポイントとなります。次回から数回に分けてこの「アサーション」という考え方について説明していきます。

参考文献:
『アサーショントレーニング ~さわやかな「自己表現」のために~』
(平木 典子、日本・精神技術研究所)

この記事は、私が専属産業医をしている企業内で配信しているメールマガジンの内容を、ウェブ用に書き直したものです。